恩讐の彼方に【JS】 (ページ2)

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叔父ページ2

俺には叔父さんについてに記憶があんまりない。俺が物心ついた時にはもう叔父さんはこの屋敷にはいなかったし、今は亡き母も彼のことはあまり話したがらなかった。俺も何か彼のことは尋ねてはいけない、そんな空気を察してあえて触れないように過ごしてきた。

そんなある日のこと。

学校にたまたま、本当にたまたま一人で向かっていた時のことだった。

「おい！そこの坊主！」

しわがれ声に驚いて振り返るとそこにはみすぼらしい格好の老婆が一人。そのあまりに異様な雰囲気に喉の奥からヒッと引き攣れた声が漏れだす。

「あんたあの櫻井家の坊主だろ！そりゃわかるさ、そんなお綺麗な身なりができる子供なんざこのあたりじゃあの家だけだからね！」

憎々しげに吐き出される言葉たち。

「だけどあんたあの男には似てないねぇ。」

ーあの男？

「知らないのかい？名門櫻井家の恥さらしってね。いま櫻井家に子供は当主の息子だけって聞いたことあるから、きっとあんたの叔父になるねぇ。」

ー叔父のことを知っているの？

「おうとも！聞きたいのかい？じゃあ金を払うんだね！金さえだしゃあ教えてやるよ。」

どうやら最初からこれが目当てで近づいてきたようで仕方なしに金を出すとそこから老婆はすらすらと語り始めた。

櫻井家はもともと国に５つしかない公爵家のうちの１つである。しかし、先代ーつまりは俺の祖父がなかなか跡継ぎに恵まれなかった。そこで他の公爵家から養子を迎え入れたのだ。けれども養子が次の当主として育てられ３年ほど経ったときに、先代に実の子が誕生してしまう。それが俺の父、今の当主である。居場所を失った養子は家を飛び出し犯罪に手を染め始めた。そしてそれが俺の叔父さんというわけだ。

叔父さんといっても血はつながっていないし、姿かたちも残された写真でしか見たこともない。今となっては裏社会の住人のボスのようで行方は杳としてしれない。

けれども彼は、潤の実の父親であった。