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その27 ページ28

「どうせコネかなんかでしょ?」



審査員と話をした後、通りすがりにそう言われることは多かった



けど私は生まれてから多くの時間をピアノに費やした

才能がないと知っていても、努力をしなかったわけではない



「青柳さんは弾いている姿がとても綺麗だわ」



努力は最大限発揮して、足りない部分は上手い風に魅せたるようになった


猫をかぶるようになってから自分がどんな仕草をしたら綺麗に見えるか、上手に見えるかを理解したからだ




才能がない分は演技でごまかしてきた


そんなんだから、私はいつまで経ってもリビングから聞いている父に説教されるんだろう



音だけでは魅力がない

姿がないと意味がない



分かっていても、辞められない

私は永遠にピアノが上手い演技をし続けるのだろう





「お前本当はショーがやりたいんじゃねぇの?」


「え、そんなわけないじゃん」



ショーの帰り道、楽しかったねと言うと彰人は立ち止まった


止まった彰人に気づいて振り返ると、珍しく真剣な顔をしていた




「いつまで自分に嘘つく気だよ
 いい加減素直になってもいいだろ」


「あー…私が演技上手すぎてそう見えたんでしょ?
 案外器用なんだよ、私」


「だからッ!!…はぁ」



私が笑うと彰人はあーって!言って頭を抱えた


驚いて駆け寄ると、彰人は私の腕を掴んで顔を上げた




「舞台から見た景色、お前は何とも思わなかったのかよ」


「別に、何とも思わなかったよ?」


「じゃあお前は一生このままだな」


「え、」



掴まれた手は解放され、彰人は何もなかったように歩き出した



一生このまま?

何言ってるの当たり前じゃない



私は青柳Aでクラシックをする人間なの


歌って踊るショーをやるんじゃなくて

黙ってピアノ弾いて演技して…





「クラシックを一生やり続けたいなんて…思ってるわけないじゃない!!」



私が叫ぶと彰人は立ち止まった

振り返らない事をいいことに、私はどんどん言葉を続けた




「ずっと前から!!…ショーをしたあの日から!!
 私はクラシックよりもショーがやりたかった!」



声に出せば出すほど涙が溢れて止まらない



「でもピアノを弾かないと家族は振り返ってくれないのよ…
 冬弥と一緒に弾かないと家族は私に関心を持ってくれない!!」



才能がない私は家族から認めてもらえない


愛されたくて私は、自分のやりたいことよりも家族を選んだのだ

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餃子(プロフ) - すみません通知溜まってるし第一章は終わっているので全く見てませんでした、、、コメント見て表現は編集したのでまた読みにくかったら言ってください (2022年3月16日 14時) (レス) id: 62fd12ab2d (このIDを非表示/違反報告)
八戸 - 確かに汗とかないほうが読みやすいかもです…。()つけてみるのもありかもです! (2022年3月15日 21時) (レス) @page2 id: 31c5d0f724 (このIDを非表示/違反報告)
Y(プロフ) - 汗とか怒とかの感情書かない方が正直読みやすいです… (2022年2月28日 2時) (レス) @page16 id: 6135a2eb1f (このIDを非表示/違反報告)
餃子(プロフ) - リオットさん» とってもコメント遅くなって申し訳ありません、、!!コメント嬉しいです(^^)頑張ります! (2022年1月4日 16時) (レス) id: 62fd12ab2d (このIDを非表示/違反報告)
リオット - 凄く好きな小説でした。ありがとうございます。更新頑張ってください。 (2021年12月10日 22時) (レス) @page44 id: 5c3b65f0f4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:餃子 | 作成日時:2021年8月22日 21時

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