個性：重力操作 (ページ8)

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夢ページ8

真っ暗な空間と、独特の浮遊感。それを感じ、妾は、ああ、またここか……と理解する。この可笑しな空間は、妾の夢の中だ。そして、この夢を見た時、決まって人が現れる。

「よお、久しぶりじゃねェか。随分と逞しくなったなァ」

予感的中だ。

「こちとら疲れてんだけど」

マフィアに堕ちた妾の先祖だ。妾は普通に中也と呼んでいる。彼は自分の“個性”を頑なに子孫には渡さなかったが、妾が産まれた時に「コイツだ」と思って渡したらしい。なんでそんなの選べるのかと聞いた時、中也は「それは、俺が人間じゃねェからだ」と言って難しい話をしていたため、よく分からん。

でも、人間じゃないのになんで人間の子供が生まれたんだろ…あ、もしかしてそれも、話してたりしたのかな。ま、いいけどさ。

「そんな硬ェこと云うなよ。俺は、手前に話がある」

妾の目の色や髪色は、家族ではなく中也と同じ。妾の家族は皆黒髪に黒目。中也がハニトラの任務で避妊せずに交わった女の遺伝を子孫の代まで、皆、綺麗に引き継いだのだ。ちなみに、ハニトラはかけ間違えたらしい、ウケる。記憶は薬で消したけど、なんでか中原って名前だけは消せなかったらしい。女の執着心エグいな。近所の人には良く養子かと噂されてたっけな。どうでもいいけど。

「手短に済ませろよ。この夢見て起きた時、寝た気しねェんだよ」

ちなみに、口調が乱暴になるのは、中也譲りだ。この鍛えられた体は、中也と夢の中で手合わせしてたら現実にまで響いてたってだけ。いや、だけって言い方はおかしいか。

「悪い悪い。じゃあ、手短に話す」

いつになく真剣な顔で言った中也に、つられて妾も真剣になった。

「俺は手前に“個性”の使い方について話したな」

「ああ、うん」

「だが、一つ話していないことがある」

話していないこと…？

「実は、この“個性”には必殺技っつーもんがある。認めたくねえが…俺の相棒に太宰治がいたのは知ってるか？」

「うん、まあ…」

確か、文豪中まで自殺マニアの太宰治に誘われたから堕ちたんだよね。よーく知ってますとも。

「太宰治の“個性”は、個性無効化だったんだ。触れた相手の個性を無効化する個性」

「……へえ」

「必殺技を使うには、“個性”を無効化出来る奴が必要だ。手前の担任、彼奴も個性無効化だろ？視た者の“個性”を無効化する“個性”……だったよな」

そうだっけ、つか、なんで知ってんの？