「死別」其の五 ページ5
何が起こったのか。
誰一人として状況を呑み込める者はいなかった。
端的に言えば、『千丈が目の前で、車の往来に引っ張られて消えた』。
そう表現するしかなかった。
スマホに夢中になっていた彼が急に飛び出すなどあり得ない。まして、それならば何処かに転がっている筈であろう千丈も見当たらない。
なにより、五人全員の目には『千丈が引っ張られて』見えた。
仔猫の様に襟元を引っ張られ、あの大通りの車の往来の中に。
その刹那、千丈が此方へ手を伸ばした様にも見えた。
助けて！！
そう言わんばかりの表情で。
「一体………何が…？」
頼原は困惑と焦燥が徐々に混じり合う感覚を覚えた。
あまりに摩訶不思議な現象に、四人は頼原の呟きにただ押し黙っている。
「…………いぶき…何で……？」
末浦の猫の様な大きい瞳が見開かれ、その目には、うっすら涙の幕が張っていた。
死んでしまったのか？それとも───
何一つ状況が掴めない。
あんなに千丈を毛嫌いしていた金坂ですら、心配げな表情で狼狽えている。
「ひとまず、…その、警察に連絡した方が………」
時公はたどたどしい言葉で臼井に問い掛けた。
「それが一番正しい。今から警察に捜索願を出そう。ただ……………」
臼井が口ごもる。緊張がその場に停滞した。
「今見た通りだ。これが五人同時に見た白昼夢でないのならば………千丈が見つかる可能性は…」
そこまで言って、口を噤んだ。僅かな絶望に曇った顔で。
誰もが、遊園地の気分などとうに失せてしまった。
信号機が青に変わる。
誰一人、渡ろうとも思わなかった。
「…………なあ、もし千丈が見つからなかったらさ……」
頼原が張り詰めた静寂を破る。
「俺達で、アイツを捜そう。」
その翠の目は、強い決意に燃えていた。
「ふっ………頼原らしいな！良いぜ、俺も着いてく」
頼原の言葉に元気付けられたのか、渡辺が一番にそう答えた。
「うん、それじゃあ俺も行くよ。千丈が心配だし……ゴールデンウィーク終日までには流石に見つかるって」
続けて末浦もそう言って笑った。
「お前達だけでは心配だ、俺もお供させてもらう」
「え、ちょ、臼井殿も？俺も便乗する流れじゃんこれ……………まあ、行くけどさ…」
臼井に金坂が続く。
何やかんやと言いながらも、どうやら心配している様だ。
その一方で…
「無能だなぁ…………何であそこで失敗するかなあ……」
不満で顔を顰めながら小さく舌打ちをした影が一人、踵を返して去って行った。
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ｱﾌﾞﾗｱｹﾞの妖精(プロフ) - ベルモットさん» うわー！！！ありがとうございます〜！！！(ToT)更新滞っていて申し訳ないですす…三年間煮詰めてきたお話なので楽しんで頂けたら幸甚でございますｯｯｯ！！！(*^^*) (2020年9月19日 21時) (
レス) id: d5dc16b5cb (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - あなた様の夢小説を読みました。設定や文章が細かくて、世界観に浸りながら読みました。続けを楽しみに待っていますね。 (2020年9月19日 19時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
ｱﾌﾞﾗｱｹﾞの妖精(プロフ) - ?みなと?くんは低浮上さん» ﾋﾟｬｯｯｯろんへるガチ勢…！(’-’*)♪うれちいぞ……ｯｯｯありがとう！！！ まだ鬼さん達すら出てないもんね…！！！いっぱいみなちゃんの推し出せるよう頑張る〜！！！ (2020年8月5日 7時) (レス) id: d5dc16b5cb (このIDを非表示/違反報告)
?みなと?くんは低浮上(プロフ) - なに！？ロンヘルの小説！？ろんへるがち勢のワシ得でしかないね！推し様がたくさんでることを祈る……！ (2020年8月4日 23時) (レス) id: c2018e7ed7 (このIDを非表示/違反報告)
ｱﾌﾞﾗｱｹﾞの妖精(プロフ) - そりす。さん» ふへへへへへろんへる小説書き始めちゃった……(*^¬^*)挿し絵用のイラストとかも入れてく予定だから、更新お楽しみに…！！！ (2020年8月4日 16時) (レス) id: d5dc16b5cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ｱﾌﾞﾗｱｹﾞの妖精 | 作成日時：2020年8月4日 16時
