【HQ】英国貴族も楽じゃない【瀬見英太】 (ページ3)

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薔薇３本ページ3

*

「なあ」

「はい」

廊下を2人で歩くと、通り過ぎる人がみんな振り返る。
珍しさからなのか美しさからなのか。

時は遡ること5分前。
先生に俺とAが呼び出された。
学校内は広いから案内しろ、ということだった。

「俺もAって呼んでいいのか？」

「もちろんですわ」

彼女は、愛想笑いにしても心を奪われるほど美しい微笑を浮かべた。

「やっぱ、舞踏会とかあんの？」

「ええ、わたくしも齢12の時に社交界デビュー致しましたわ」

「へえ、なんか絵本の世界みてぇだな」

「わたくしにとっては、ここの方が絵本の世界のようですわ」

「そうなのか？」

「はい、わたくし、このような短いスカートは履いたことがございません」

「へえ」

俺たちは体育館、食堂、特別教室などをまわって教室に戻った。

「瀬見様、ご案内大変感謝申し上げますわ」

「おう」

「では、わたくしは側近の者と家へ帰りますのでこれで失礼いたします」

Aの日本語は丁寧で上手だが、やはりまだ慣れないのか説明的だ。
それでも綺麗な声と仕草に圧倒される。

俺と同じ人間なのか、そう疑うほど美しく完璧なA。

Aはくるっと俺に背を向けて、髪をなびかせて優雅に歩く。
俺はその後ろ姿に見惚れることしかできなかった。