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いくらもしないうちに神が戻ってきて、空いてる、と一言発した後には、もう、俺は紫耀に、お姫さまだっこされていた。ごめんね、ちょっと揺れるよ、と十数メートル先の楽屋に連れて行かれた。
真ん中に置かれているソファーにふわっと置かれ、横から神が、ちょっとごめんね、と言って上半身を支えられクッションを挟んだ。少し頭の方上げといた方が楽らしいよ、と。きっと玄樹のことで学んだんだろう。
なんでこんなに、頭の隅では冷静にいられるんやろか。
「廉、ゆっくり、何にも考えないでいいから、俺の真似だけしてて、ね。ちゃんと息吐いて…」
そうしてまた紫耀に呼吸を促され、何も考えるなと言われても、俺のざわざわはもはやしっかり形をなしていた。それが、アイドルでいることへの漠然とした恐怖だということも、理解してしまっていた。
絶え間なく溢れる涙は、もはや感情的なものなのか、生理的なものなのか、わからなかった。
紫耀は俺の身体をずっとさすってくれ、たまに涙を拭ってくれて、神は頭を撫でてくれた。
馬鹿みたいに、紫耀の真似をしていた。それはもう無意識のところで。どうにでもなればええ、申し訳ない、もう俺のことなんて放っておいてくれ、と思う反面、強く目の前の彼らに助けを求めていた。
不意に思い出した世界から置いて行かれる感覚に、力の戻ってきた俺の手が宙をさまよった。何かにすがりたくて、置いて行かれたくなくて。
彷徨った手は、ギュと紫耀に握り止められた。
「廉、落ち着いたね…。大丈夫、大丈夫だよ。…涙、止まんないね…。」
いつの間にか治っていたらしい過呼吸。
やから、力戻ったんやな……いらない思考もな…
それでも、流れ続ける涙はなんなんだろう。
「しょお…じん…ごめんな…」
「んーん、大丈夫。もう少し休んどけ。」
「そうだよ、廉、気にすんな。…て言っといて申し訳ないんだけど、ちょっと隣見てくる。もう集合時間だし…。」
「マジか…でも…れん、仕事、できるか？」
紫耀の仕事という言葉に無意識に肩が跳ねる。
できるかどうかやない、やらんと。やらんといかんのや。わかっとる、わかっとるのに…
「……っ」
やれると伝えるべきなのに言葉が出てこなかった。
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かみな - すごく綺麗で伝わってくる作品でした。応援してます！ (2020年3月22日 18時) (
レス) id: 6273f3044e (このIDを非表示/違反報告)
しろごはん(プロフ) - urrnkさん» urrnkさん、コメントありがとうございます〜！楽しんでもらえたようで良かったです。読んでくれてありがとうございました！ (2019年9月29日 12時) (レス) id: feb1916cdd (このIDを非表示/違反報告)
urrnk(プロフ) - とてもよかったです。 (2019年9月24日 2時) (レス) id: 427c4c7f7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しろごはん
| 作成日時：2019年9月22日 15時
