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足が出なかった。機械的に開かれたドアから人が出てきて、吸い込まれていく。俺を避けるように人が動く。
乗らなきゃ。乗らなきゃ、乗らなきゃ…
機械的に閉まるドアの向こうからも、避けるこっちの人たちからも、立ち竦み俯向く俺に不審な視線を投げかけているだろう。下げた視線の中、人々の足元があらゆる方向に向かってく。俺の足は動かなかった。そして今も、動けないでいた。出発した電車の音に、世界から置いて行かれたことを突きつけられた気がした。
デビューしてからというものの基本送り迎えは車で。大学の授業後にそのまま仕事だと大体大学のそばまで迎えに来てくれていたし、実質電車に乗るのは大学へ行く時だけだった。ようは、仕事に行く、ということは自分の意思とは別のところにあった。乗れば良くも悪くも連れて行ってくれる、状態だった。
久しぶりに、何人かいるマネも迎えの都合がつかないらしく、電車移動を余儀なくされた。何も考えず受け入れた。むしろ、ジュニアの頃のようで電車で向かうと決まった時は若干楽しくすら感じていた。
ところがどうだ。
いつものように友達と授業を受け、急ぐわ、と駅へ先に歩き出した。キャップにマスクを装着するが、大学も、最寄駅も、ある程度俺だとバレたところでもう騒ぎなんてほとんど起きない。こういうとき人間の慣れはありがたい。スマホを取り出し、撮影場所の確認をする。電車を調べる。
仕事、行くんかぁー…
ふわっと頭の中に浮かんできた、その言葉。何か、余分な気持ちが芽生え始める。
五人で雑誌の撮影やー…
今日も仕事かぁー…
そらそうやな、アイドルやもん
ちゃんと働かな
キラキラせんと…
キラキラなぁ…キラキラしとんのかなぁ…
なんやろ…なんなんやろか
…もやもやしとんなぁ
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かみな - すごく綺麗で伝わってくる作品でした。応援してます！ (2020年3月22日 18時) (
レス) id: 6273f3044e (このIDを非表示/違反報告)
しろごはん(プロフ) - urrnkさん» urrnkさん、コメントありがとうございます〜！楽しんでもらえたようで良かったです。読んでくれてありがとうございました！ (2019年9月29日 12時) (レス) id: feb1916cdd (このIDを非表示/違反報告)
urrnk(プロフ) - とてもよかったです。 (2019年9月24日 2時) (レス) id: 427c4c7f7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しろごはん
| 作成日時：2019年9月22日 15時
