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(……でも……)
きっと神は、それを片割れの安らぎであると決めつけているのだろう。
ふっと、そんなことを考えたAは自分が片割れだということを再認識させた。
やっぱり、完全な人間や化身にはなれないんだ。
(化身も人間じゃない……でも、国がある限り半永久的に消えることがない。)
例え永遠に生きていくことになったとしても、消失の恐怖に怯えなくてすむ化身を、Aはどこかで羨んでいた。
「……Aー?」
のぞき込んだ、アーティの顔が映る。Aはとっさに感情を隠し、アーティに答えた。
「……なんでもない。」
「そっかあ。……そんなわけだから、Aも気をつけてね?」
「ありがとう、わかったわ。……ねえ、アーティ。」
「んー?」
「あなたは、怖くないの?」
「何がー?」
「……この世界から、消えてしまうこと。」
また、だ。Aは締め付けられ張り裂けそうな胸を押さえ、ぎゅっと拳を握り締めた。
他の片割れが消えていくのを見てきたから、余計、怖い。
Aは、消えることが怖かった。痛みや、足や手が消えていくことの恐怖ではない。『もう二度とそばにいられなくなる』『忘れられてしまう』という、事実と未来に恐れていた。
エリザベータのそばにも。そして、ギルベルトのそばにもいられなくなる。
そして二人とも、いつか必ず、自分を忘れてしまう。
それが、とても、Aにとって怖いことであったのだ。
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幻想曲(プロフ) - darkness duskさん» ありがとうございます!はい、更新頑張りますね(´∀`*)そう言っていただけるのが一番嬉しいです(^q^) (2014年9月4日 0時) (レス) id: 4fb4e092fe (このIDを非表示/違反報告)
darkness dusk(プロフ) - 初めまして。いきなり失礼します。続編おめでとうございます!いつも楽しみに読ませていただいてます!頑張って下さい! (2014年9月4日 0時) (レス) id: ff9839b328 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:幻想曲 | 作者ホームページ:http://uranai.amanoboru
作成日時:2014年9月4日 0時