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「ヒョン！どうしたんですか！」
猛ダッシュでテヒョニヒョンの家にたどり着くと、俺はびっしょりと汗をかいていた。
滴った汗が顎の先に集まる感覚が何だかくすぐったい。
あのヒョンがわざわざ電話をかけてくる程の用事なんて、一体なんだろう。
心配でたまらない。
「……あぁ良かった。ジョングク、生きてた。」
ドアを開けた先にいるヒョンの第一声はそれだった。
拍子抜けしてしまう、今のこの状況にはまさにこの言葉がよく似合うと思った。
いつもとは違ってラフな格好で、髪もボサボサのまま丸眼鏡をしているヒョンは、どこか正気を失っているような感じだった。
「ヒ、ヒョン。どうしたんですか」
「いや、お前なら言わなくたって分かるだろこの状況。こうやって人と会話するのも久しぶりだよ」
「……あぁ、あのことですか」
あの活動休止発表があって以来、俺達は一切連絡を取り合わなくなっていた。
一番の推しを急に失うという状況に。2人とも頭がついていかずにお互いに声を掛けることが出来なかったんだと思う。
自分の中で、気持ちの整理をするのに精一杯になりすぎて。
それで、ヒョンは俺が生きているのかが心配になってああやって呼び出したのだと言う。
俺の性格的に、ああでもしなきゃ来てくれない思ったからだと。
そういえば、俺も今日の朝までこのヒョンの様だったかもしれない。
生きている意味が分からなくなっているように、何もかも無気力で。辛うじて生きているっていう感覚。
ヒョンになら、伝えてもいいかな。
……でも、これはAちゃんのプライベートだし。
だけど、Aちゃんは、ちゃんと夢を叶える為の一歩を踏み出しているんだってことを分かって欲しいと思った。
「あの、ヒョン。」
「……、なに…？」
「俺、前を向こうと思います」
「………………」
「Aちゃんは、今も何処かで夢の為に頑張ってると思うんです。ただそれが、俺達の目に少しの間映らないだけ。だから落ち込むことないなって。俺はAちゃんがいつでも帰ってこれる様に待っていようって。そう思ったんです。」
俺はその姿を、めちゃめちゃ目視できるけど。
でも、たった1人の発言がその夢を壊すことだってあり得る。
だから、知らないフリをしよう。
俺はちゃんと、「クラスメイト」として彼女と接しよう。
俺、チョンジョングクは今ここに、
それを強く、誓おうと思う。
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作者名：√ | 作成日時：2019年2月21日 14時
