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〜末澤side〜





「なあなあ誠也くん、購買ってどこにあるんやっけ?」





小島の言葉に高一たちの手元を見れば、
高一はお弁当を持っていなかったことを思い出す。


仕方なく俺は立ち上がり、
扉の方に向かった。





「ついてこい。連れてったる」


「いぇーい!」





まるで大橋みたいに騒ぐ佐野に、
高三が引退してもうるさいんやろうなあ、
なんて想像が巡る。


振り向けば
五十嵐が気まずそうな顔をしているのを見て、
思わず「五十嵐、こっち来てええねんで」なんて
声をかけてしまった。


俺らしくもないそれに、
小島たちも部員も目を丸くしているのが見える。


誤魔化すように部室を出て、
歩き出した。


俺は顔が赤くなってくるのを感じながら、
隣にやってきた五十嵐に話しかける。





「俺、高二の末澤誠也。えーっと、一応ギターやっとる」


「よろしくお願いします」





背の高さは同じくらいで
華奢なその体によって儚く見えるのに、
なぜか芯がしっかり通っているような、
強さが垣間見える。


人見知りかなんなのか、
行動が控えめなのがもったいなかった。


……だからなのか、
自然と出てしまった言葉。





「五十嵐って……人見知りするタイプ?」





目を見開いて動揺を隠さない彼女に、
傷つけてしまったかな、
なんて後悔が襲う。


だけど、
そんな心配なんていらなかった。


一転、
五十嵐が柔らかく表情を緩めたから。





「ちょっと緊張してて……。小島くんとか正門くんとかと知り合ったときもあんまり上手く話せへんかったんですけど」


「おん」


「末澤先輩たちもどんな人なんかわからんかったので緊張しとったんですけど、思ってたよりも全然末澤先輩がええ人で、安心しました」





ふんわりと花が咲くように笑った五十嵐に、
なんだか変な気持ちに襲われる。


照れくさいような、
もっとその笑顔を見たいような、
ともかく変な気持ち。


ただ一つ確かなのは、
高鳴る鼓動だった。


自分の中で気持ちを誤魔化すように、
わざと小島たちの方を振り向く。


案の定、
小島と佐野がふざけ合いながら歩いているため
廊下を広がって歩いていて、
他のことに意識を向けられると安堵した。





「小島、佐野、広がって歩くな」


「あーい、とぅいまてぇーん」





怒られてもなおふざける小島に
再度怒ろうと口を開きかけた時、
隣から笑い声が聞こえ
そちらを向く。


笑い声の主である五十嵐は、
「仲ええんですね」といたずらっぽく微笑んだ。


……なんや、普通にできるやん。

5.五十嵐と軽音楽部→←.



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作者名:みづき | 作成日時:2024年1月5日 18時

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