13.LIFE〜目の前の向こうへ〜 ページ27
※ここからスパークルとは違うお話です※
______________________
翌日。
いつもの時刻に部室に集まれば、末澤くんに楽譜を手渡された。無機質な五線に、たくさんの音符たちが踊っている。題名はもちろん、『LIFE〜目の前の向こうへ〜』。
難易度で言えば、今自分が練習している曲とあまり差はない。だけど、それはあくまで私一人の話で。楽器はもちろん、上手さや経験値も違う他の人たちと合わせなければならない__それが、難しい。
そういえば、これは何かで発表する曲なんかな?頭に浮かんだ疑問を、近くにいた西畑くんに投げかけてみる。
五十嵐「あの、西畑くん」
西畑「んー?」
五十嵐「これ、どっかで発表とかするんですか……するん?」
西畑「あー、これ、全員に答えなあかん質問やねぇ。ちょっとー、みんな聞いてぇや」
西畑くんが声を張り上げると、各々作業をしていたみんながこちらを向いた。
西畑「今配った楽譜……その曲ね、学生フェスで披露しようと思っとる」
小島「学生フェス!?」
西畑「そ。今年は六月七日なんやけど、その学生フェスが終わったら俺らは引退するよ」
”学生フェス”という言葉に、廉くんの顔がぱっと浮かぶ。そうや、スパークルを買った時、正門くんと話してた。
「ということは……今四月の下旬やから、あと一ヶ月ちょっとか」とリチャくんが呟く。「え!?全然時間ないやん!!」という晶哉くんの叫びに、藤原くんの表情がすっと真剣になった。
藤原「そう。ぜんっぜん時間ない。だからちゃんと練習して、仕上げなあかん」
聞くところには、この曲は通常習得するのに最低でも四ヶ月はかかるらしい。それを一ヶ月ちょっとで仕上げる……そんな無茶な話に、不安の影が射す。
ほんまにそんなのできるんかな……そんな私の表情に気がついたのか、ぽん、と頭に大きな手が乗る感覚がした。
見上げると目が合ったのは、優しく微笑む大橋くん。
大橋「そーんな心配せんくて大丈夫。俺らなんてなぁ、一年かかるやつ二ヶ月に詰め込んだことあったよな?やればできるもんやから、俺らに任しとき!」
五十嵐「ありがとうございます……」
やっぱり、”敬語なし”なんてルールは難しくて。とっても優しい大橋くんに、自然と敬語が出てしまうんよ。
「さ、ということで時間ないし練習始めよ!」という西畑くんの声掛けに、私達は「はい!」と大きく返事した。
続く (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←.
50人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みづき | 作成日時:2024年1月5日 18時