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12.すれ違う屋上 ページ25

本格的に授業が始まってから、二日目。
主に授業内容がオリエンテーションだった昨日とは違い、教科書を使っての授業が始まった。


こんな難しい内容やっていけるんかな……と不安になっては、空を見上げて心を奮い立たせる、その繰り返し。


やっとやって来たお昼休み、私は隣の小島くんが立ち上がるのを横目で見送っていた。


……やっぱり、今日も屋上行くんや。


私も、行ってええんかな?


そう思ってランチバックを手に取った時……、不意に、目の前に人の影が落ちた。





「__あの、五十嵐さん、ですよね?」


五十嵐「えっ?」





顔を上げると、そこには長い黒髪をポニーテールにまとめた綺麗な女の子が立っていた。


なんとなく見たことがあるし、ランチバックを持っとる辺りから、きっとこのクラスの子やろう。





五十嵐「はい……そうです。五十嵐美智子です、けど」


「あ、急に話しかけてもうてすみません!私、渡辺莉子っていいます。あの、」


五十嵐「……はい」


渡辺「友達になってもらえませんか!!」





いきなりお辞儀をされ、びっくりして「へ?」と間抜けな声が出てしまった。


友達……友達?急に?なんで?


突然の展開に混乱する頭の中で、渡辺さんが体を上げるのが見えた。





渡辺「変なこと言いますけど、五十嵐さん、めっちゃかわええなあと思ってて。丁度一人でおったから、チャンスだと思って話しかけちゃいました!すみません!」


五十嵐「……あ、えーっと」





ぱっちりした大きな目の可愛い女の子が、私にこんなことを言ってくれとる……その奇妙な状況に思わず零れてしまったのは、笑い。


でも……でもこれって多分、高校三年間ぼっち生活やなくなる最大のチャンス……!?


このチャンスを、逃すわけにはいかない!





五十嵐「……私で良ければ、お願いします!」


渡辺「ほんまですか!?ありがとうございます〜〜!!」





「もう友達なんやから、お互い敬語はやめにしましょ」と微笑みかければ、「見た目だけやなく心も綺麗すぎる……」なんて。


その言い方といい、話しかけてくれた勇気といい、渡辺さんって面白い子なのかも。





渡辺「良かったら、一緒にお昼食べへん?」


五十嵐「もちろん、ええよ!」





渡辺さんが椅子を持ってきてくれて、私の席で一緒にお弁当を食べる。


弾む会話の中でふとよぎったのは__、小島くんのこと。


……屋上、行けんかったなあ。

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作者名:みづき | 作成日時:2024年1月5日 18時

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