10.部活スタート ページ21
小島くんとお弁当を食べ、
頭の痛くなるような五、六時限目を乗り越え、
話の長い担任のホームルームを聞き流し……、
とうとう部活の時間がやってきた！
先にホームルームが終わっていた四組の二人が迎えに来てくれとって、
慌ててかばんを手に取る。
そして、ギターのカバーを肩にかけると、
心地よい重みに笑みが浮かんだ。
中に入っているのは、
朝正門くんから受け取ったばかりのスパークル。
これを弾けるときが来たんやなぁ、
って感心してしまう。
「行くで」
「はい！」
小島くんの声かけに、
私はその背中へ駆け寄った。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
「「「こんにちはー」」」
部室に入るなり、
みんなで声を揃えて挨拶をする。
一足先に着いていた先輩たちが
一斉に私たちを見て、
「こんにちは」と声を揃えて返してくれた。
「わー！おいでませー軽音楽部へー！！」
「大橋くん声でかいですって」
小島くんが笑い、
大橋くんも照れたように頭をかく。
「今日から仮入部期間か」と近くにいた末澤くんが呟いたので、
「そうです……やなくて、そう」と拙い日本語で返した。
本校には"仮入部期間"というものが存在し、
今日・四月十日から五月までの
約三週間のことを指す。
その期間中はどの部活を見学にいってもよくて、
完全に入部していなくても部活に参加することができるらしいねん。
私は軽音部以外の部には入りたい気持ちなんてこれっぽっちもないから、
早速入部届を出すつもりやけど。
「さ、みなさんここの椅子に座って〜。今日はまず、課題曲を決めることから始めるで」
西畑くんの言葉に、
私たちはとりあえず適当に座る。
自然と正門くんと晶哉くんに挟まれる形になり、
私はきゅっと小さく体を縮こませた。
少しほこりを被った黒板に
西畑くんが歩み寄る。
「この前みんなに自己紹介してもらったとき、やりたい楽器についても言うてくれたね」
「はい」
「あまりにも被っとったらオーディションも考えとったけど、あれくらいの被り……正門と美智子ちゃんな……あれくらいやったから大丈夫。みんなその楽器で決定な」
ギターを弾かせてもらえることがわかり、
とりあえず一安心。
部長の大橋くんは
にこにこ座って話を聞くばかりで、
まとめ役は西畑くんが任されてんのかなぁ
なんて考える。
「……一個質問ええ？」
静かな空間に、
リチャくんの声が響いた。
「ん、ええよ。何？」西畑くんが促せば、
リチャくんは目を細める。
「それやと、ギターが末澤、正門、五十嵐で三人になるけど。多くない？」
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作者名：みづき | 作成日時：2024年1月5日 18時
