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とんとん、と右肩を叩かれ、
やっとその声が私へ向けられたものだったと気がつく。
そちらを向くと、
声をかけてきたのは小島くんのようだった。
「俺、小島健っていいます。五十嵐さん……やんな？」
「は、はい」
さっきのクールな表情から一転、
にこっとと笑いかけてくれた小島くんに、
びっくりして声が小さくなってしまった。
わざわざ自己紹介してもらったからには、
私もせなあかんなあ、
なんてぼんやり考える。
私も固くなった表情を緩めて、
できる限りの微笑みを向けた。
「五十嵐美智子です。よろしくお願いします」
そう言うと、
何だかほっとしたように笑う小島くん。
いすごとガコガコ近づいてきて、
柔軟剤の香りか何なのか、
甘い香りがふわっと漂う。
「俺な、ここの附属の中学からそのまんまあがってきてんけど。仲ええ友達二人全員四組やってん。一人無理やから話しかけてもうた」
「へぇー……」
ニコニコと人懐っこそうに笑う小島くん。
仲ええグループで
一人だけ離れてまうなんて、
相当つらいはずなんやけどなあ。
私はそれどころかもともとの友達がおらんから、
別の類の寂しさやわ。
「五十嵐さんはあれやろ？高校から入ってきた」
「おん。でも人見知りやから……自分から話しかけれへんし、友達できるかなあ、って」
私が目を細めると、
小島くんは一瞬驚いたような顔をしたあと、
ニヤッと笑った。
「ほな、友達になろうや、俺ら」
「え……？」
「ぼっち同士で……な？」
「ぼっち……」
思わず笑みをこぼしてしまうと、
小島くんは私の手をさらって
きゅっと握手した。
「俺ら友達！」と笑う小島くんを見ると、
案外この人と友達になれてよかったかもしれへん、
なんて思いが巡る。
そういえば……。
「会いにいかんくてええの？その友達に」
私の疑問に、
小島くんは握手をやめて髪をかき上げた。「別に？向こうがもうじき来てくれるやろうし」
表情は笑っているけど、
その裏には寂しい気持ちが隠れとるんやろうか。
そう思うとなんだか切なくなってしまって、
すっと小島くんから視線を落とした。
……すると、
視界のすみっこに
こちらに駆け寄ってくる人影が映る。
そちらに視線を向ければ、
これまた顔立ちの整いまくった男子が三人、
小島くんになだれ込むようにぶつかった。
「……噂をすれば」
げんなりしたような顔で
小島くんは二人を引き剥がす。
「こいつらが、俺の友達」
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作者名：みづき | 作成日時：2024年1月5日 18時
