. ページ12
〜五十嵐side〜
私の発言に、
西畑先輩が「あ!え!?」と叫んだ。
「……もしかして美智子ちゃんのお父さん、五十嵐奏介さん?」
「え?そうですけど……」
まさか西畑先輩の口から
お父さんの名前が出てくるなんて思っていなくて、
なんで?という思いが脳を埋め尽くす。
「誰?」と聞いた末澤先輩に、
西畑先輩が興奮したように早口で言った。
「ここの学校で軽音部作った人やで!確か俺が高一の時、OB訪問で来てくれててん」
「あー……覚えてへんわごめん」
藤原先輩の謝罪に、
「そんなそんな」と首を振る。
でもお父さんがこの部の創部者やったなんて、
娘の私でも知らんかった。
西畑先輩そんなことも覚えとるなんて、
やっぱりしっかりしとるタイプなんやろうなあ。
隣に座る小島くんが、
「お前そんなすごい人の娘やったんか」なんて言うてくるから、
「すごい人なんかやないよ」とやんわり否定する。
お母さんと結婚してから音楽をやめたお父さんは、
別にすごい人なんかじゃない。
と、大橋先輩が口を開く。
「あ、せや、一応まだ入部してへんけど、この部のルールを教えときます!」
「ルール?」
首を傾げた私に、
末澤先輩がニヤッと笑った。「まあ、聞いとき」
「そのいち!上下関係なし!」
「先輩呼び、敬語もなしね」
西畑……先輩の言葉に、
「え、」と声が漏れる。
高二はまだしも高三の先輩に敬語なしとか、
大分気がひけるんやけど……。
「美智子ちゃんは、俺らのこと呼び捨てとかくん付けでええからね」
「え……、わかりました」
と言っても部のルールなので逆らえるわけでもなく、
素直に頷いた。
「そのに!ドラム以外の楽器は自分のものを持ってきてください!」
「あ……」
これまた声が漏れてしまって、
慌てて口を塞いだ。
「自分の持ってない?」との西畑くんの問いかけに、
「えっと……」と言葉を濁す。
「今まではお父さんが昔使っとったやつ借りてて。でももうボロボロやし、新しく買うしかないかぁ……」
「それなら、」
珍しくリチャードくん……
みんなが呼んでいるから改めリチャくんが口を開いた。
「正門に一緒に買ってもらうとええよ。そういうの詳しいから」
「え、そうなんです……そうなん?」
正門くんの方を向けば、
「うん、ええよ〜」とにっこり笑ってくれる。
「明日予定空いとる〜?」と聞いた正門くんに、
思わず「明日!?」と声が出てしまった。
「空いとるけど……そんないきなりええの?」
「うん、ほな明日行こっか」
50人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みづき | 作成日時:2024年1月5日 18時