8.スパークル ページ16
「……どんくらいの値段？」
そう聞けば、
廉くんが口の横に手を添えて
私の耳元で囁いた。
「55万」
「っおー……高校生向けではないですな」
「高校生にとってそこそこ高いなんてレベルではないわ」とふくれっ面を見せれば、
「でもそれ……多分運命の一本なんやろ？」
と笑う廉くん。
「商売上手め……」と呟かざるを得なくなり、
廉くんの笑い声が聞こえた。
お金は、一応ある。もちろん銀行に。
新しいギターを買いたいと相談した時、
人生音楽漬けだった両親は
もちろん賛成してくれた。
将来本気でやっていくつもりがあるのなら、
60万までは出せる、と。
60万！？なんてその時は思ったけれど、
まさか自分がほしいと思ったものが
すれすれの値段をいくなんて
思ってもいなかった。
……でも、将来本気でやっていくか、が問題だ。
今までは純粋な気持ちで
夢を追い続けてきた。
でも、音楽の世界では、
気持ちだけではやっていけない。
才能があるか否か。
私には才能があって、
音楽で食っていけるのか。
否、ただの高校生レベルなのか。
そんなのわからなくて、
今簡単に頷けるものではなかった。
覗き込んでくる廉くんの目を見返せば、
「焦らずごゆっくりどうぞ」なんて微笑まれる。
離れていく廉くんのとは入れ違いに、
今度は正門くんが寄ってきた。
「どう？良さげなのあった？」
「うん……やねんけど、結構高くて。それにそれくらいお金をつぎ込む価値があるんか、わからんくて」
『スパークル』を見つめながら呟く。
私の視線をたどって、
正門くんが「これかぁ」とスパークルを指さした。
「めちゃくちゃ綺麗なやつやねんね」
「うん」
「……どうしてこれに大金払う価値ないかも、って思うん？」
正門くんの言葉に、
一時の沈黙が落ちる。
優しく私を見つめてくる正門くんの
視線から逃れるように、
私は視線をつま先に向けた。
「もし、音楽が趣味程度で終わるんやったら……高校三年間のためだけに、この大金を払うようなことになってまうから。将来、自分が音楽を仕事にできるんかな、って」
再び店内に訪れる沈黙。
いつの間にか、また廉くんが歩み寄ってきていて、
私の隣にそっと立った。
永遠に続きそうだった沈黙を破ったのは＿＿、
正門くん。
「逆の発想してみたら？」
「……え？」
「音楽続けるから買うんじゃなくて、このギターを買ったことによって音楽続けよう、って思えるものやないん？」
その言葉は、
すとん、と私の心に落ちてきた。
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みづき(プロフ) - みさん» コメントありがとうございます！！感想を言ってくださったお方が初めてなので嬉しさで今胸がはち切れそうです……🥹これからもどうぞよろしくお願いします！！！！ (12月18日 18時) (
レス) id: 7f61fbad39 (このIDを非表示/違反報告)
み - 前作から読んでいました。今回のも楽しみに読まさせていただきます！更新頑張ってください (12月17日 12時) (レス) id: 6eca363505 (このIDを非表示/違反報告)
みづき(プロフ) - ご指摘ありがとうございます！以後気をつけさせていただきます。 (12月9日 7時) (レス) id: b2f60789f5 (このIDを非表示/違反報告)
苺たると。(プロフ) - １ページ目のこじけんの名前が小島建になってます(>_<) 小島健です！ (12月8日 21時) (レス) @page1 id: eae7988c87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みづき | 作成日時：2023年12月6日 21時
