おいしい ページ4
次の朝。
遅刻ギリギリに滑り込んできそうな生活態度のくせして、何故か朝はHR開始三十分前には着席している。それがこいつだった。
「ほらよ。」
「あっおはよう...て、なにこれ。」
「チロル。」
「それは見ればわかるけど。なんで？」
「.....良いだろ理由なんて。」
みっつ、チョコを机に伏せているAの頭上から落とすと、器用にも全てをキャッチして不思議そうにそれらを眺めていた。
偶然コンビニの前を通りかかって、昨日の残念そうにチョコを渡してくる姿が横切ったから。とか。
...別に言ってやる必要は無い。
好物だと言うからもっと盛大に喜ぶかと思えば、何処か冷静な表情を浮かべていた。
「なんだ、気に入らなかったのか。」
「いや。轟君がくれたんだなーって思って。」
「ああ。それがどうした。」
「.......うれしいじゃん。」
たった一個数十円のチョコレート。
ぎゅっと、大切そうに両手に包んで「ありがとう。」なんて笑うのだから。
多分それらは無意識なんだろうと思うと、本当に恐ろしい奴だ。
「にしても何このモーツァルトの肖像画パッケージ。」
「知らねえけど。一番上に置いてあったからかった。...何味なんだ。」
「えっと...マジパンだって。なんで？」
「さあ。モーツァルトクーゲルでもイメージしてるんじゃねえか？」
「なにそれ。」
「オーストラリアの土産で有名なチョコレートで、マジパンとヌガー使ってるやつだ。丁度パッケージもそんな感じの。」
「へぇ。」
自分から聞いておいて、さして興味はなさそうだ。
ころんと包みから転がり出たチョコレートを一つまみ、口に入れて頬張るAは、いつかペットショップで見たハムスターに動作が似ている。
そんな事を考えながらじっと見つめていれば、「はいこれ。」ともう一つの包みも剥がして俺の口元に持ってきた。
「あげる。」
「いや、それ俺が買ったやつ。」
「いいから。一緒に食べた方がおいしいってやつだから。」
逃がしてもらえそうにもない。
諦めて口を開けば、Aの手からチョコレートを直接食べる形になってしまった。
ほんの少し、指先が唇に触れる。
「杏仁豆腐みたいだな。」
「それね。私も思った。」
「まあ嫌いじゃねえ。」
...彼女は何も感じないのか。
何処か拍子抜けしながらも、一人だけ意識している自分が居ることに気付く。
この時間になれば、ちらほら他のクラスメイトも登校してくる。
チョコレートはひたすらに甘い。
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23.4度(プロフ) - BLACKさん» コメントありがとうございます。これからシリアスに突入して二人の間にもまあ色々と起こりますのでぜひぜひよろしくお願いいたします！ (2017年9月24日 21時) (
レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
BLACK - ちょっとシリアスめがいいです！とても面白いです！これからも更新楽しみにしてます！ (2017年9月24日 17時) (レス) id: bbfe5e7001 (このIDを非表示/違反報告)
23.4度(プロフ) - 蛍さん» ご感想ありがとうございます！そう言って頂けて嬉しいです...！ぜひ最後までお付き合い下さい (2017年9月21日 17時) (レス) id: d0946bab96 (このIDを非表示/違反報告)
蛍(プロフ) - 見てる間めっちゃニヤニヤしてました！更新頑張って下さい！！ (2017年9月21日 10時) (レス) id: 630924d4f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：23.4度 | 作者ホームページ：http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時：2017年9月18日 10時
