こないで ページ15
ごく一般的な一軒家。
少しやつれた顔で心配そうに取り次いでくれる母親は、絵に書いたように良い母といった印象を受けた。崩壊した家庭の中で俺が幼い時に思い描いたような、模範的な姿に何も言えなくなった。
今回の件で最も不味かったのは、故意でなかったとしても"個性"で怪我を負わせたこと。
相手にも非がある自覚があるのか、特に申し立ては起こしていないらしいが。どちらにせよ個性発動のきっかけすら掴めていないため不用意な行動もできないのだ。
「エンデヴァーの息子さん、よね。なら自衛の手段は持ち合わせているだろうけれど、娘が意図せず危害を加えてしまうことがあるかもしれないの...。どうしてもというのなら、十分に気をつけて。」
「わかってます。」
こんな時に無理を言っているのはこちらの方だ。
それに個性に翻弄されようと、Aであることには変わらない。なんとしてでも、1度声を交わすだけでもいい。Aが助けを乞うてこないのなら、こちらから救い出してやる。
どうでもいい時ばかり轟くん轟くんと名を呼んで俺を求めるくせに、こんな時だけ蚊帳の外なんて許してやるはずがないのだから。
謙虚？そんなもの持ってない、無遠慮に人のテリトリーを踏みあらすのは得分野だろう。
俺に対する心配？ふざけるな、俺の方がお前よりも圧倒的にシンプルな力で守ってやれる。
無愛想にも必要最低限しか口を開かない俺は、蓄えた思いをぐるぐると脳内で何度も回した。
間接的とはいえ俺が要因となって人間関係を破綻させていたのなら、謝らなくてはいけない。
そこまでして俺に執着するのは何故だと、問いたださなくてはいけない。
俺をもっと頼れ。
そう言ってやらなきゃいけない。
重々しく閉ざされた扉をに手をかけて、深呼吸をした。
「おい、A。」
「.........轟くん.....??」
入るぞ。声をかけて了承を得ないままドアノブをひねれば、「こないで！！」と叫ぶA。
強い拒絶の色がありありと感じ取れるそれは、俺の動きを止めるには至らなかった。
「ねえ、こないでってば。」
「どうしてだ。」
「轟くんに、こんな可愛くないところ、見られたくない。」
秘め事を吐露するみたいに、聞いたこともない弱々しい声で顔を覆う。
カーテンの締め切られた鬱々とした部屋で座り込むAは、酷く小さく見えた。
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23.4度(プロフ) - BLACKさん» コメントありがとうございます。これからシリアスに突入して二人の間にもまあ色々と起こりますのでぜひぜひよろしくお願いいたします！ (2017年9月24日 21時) (
レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
BLACK - ちょっとシリアスめがいいです！とても面白いです！これからも更新楽しみにしてます！ (2017年9月24日 17時) (レス) id: bbfe5e7001 (このIDを非表示/違反報告)
23.4度(プロフ) - 蛍さん» ご感想ありがとうございます！そう言って頂けて嬉しいです...！ぜひ最後までお付き合い下さい (2017年9月21日 17時) (レス) id: d0946bab96 (このIDを非表示/違反報告)
蛍(プロフ) - 見てる間めっちゃニヤニヤしてました！更新頑張って下さい！！ (2017年9月21日 10時) (レス) id: 630924d4f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：23.4度 | 作者ホームページ：http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時：2017年9月18日 10時
