葛藤 ページ19
腹をくくったような顔で『なんでもする』なんて言いだすAに腹が立った。
同時に、ああこいつあ俺が男であると言う事を忘れているんだなと思った。
そういうデクの野郎ばっかりに構って、俺の事となるとてんで無頓着なあいつの態度が心底気にくわない。
高架橋の下でAに迫った時、本能がうずくのが分かった。
こいつをどうやっても俺の物にしたい。
その欲求はAが思っているような幼稚な意地だけじゃなかったのだ。
そうだ、俺はこいつが欲しい。
俺が全力を出してできない事なんてなかったはずなのに、Aだけは俺の事なんか見ちゃいなかった。
それを見透かした、その向こうにいるあいつをいつも期待一杯の目で見つめる。
いっそのこと襲ってやろうかと思った。
そうやって現実を刻み込んで、俺だけを見ていればいい。
けれど、今だってあいつのあの表情が脳裏を横切る。
頬を紅潮させてじっと俺をみつめる、怯えたような目。首筋に手を掛ければ全く抵抗する気など見せずに、欲をぶつけたとしてもそれすら受け止めるとでもいうような従順な態度が、俺の神経を逆なでした。
...あいつの為に、そこまでするのかよ。
どろりとした感情が今にも彼女を蝕みそうで、自制の利かない己に恐怖した俺は、平然を装ってAの傍を離れた。
泣きそうな顔で「だって、」。Aの蠱惑的なまでに目を引く唇はそう呟く。
「だって、なんでもするって言ったじゃない。」
あの時俺はどんな顔をしていたのか。
自分でも想像ができない。
憤怒か、失望か、軽蔑か。
ただ何も言葉を紡げなくなった俺の喉は、『月曜俺の家に来い。来なかったら殺す。』とだけ吐き捨てていた。
橋の陰に隠れて、壁にもたれ掛ったまま座り込むA。
彼女を取り残したまま逃げるようにその場を後にした。
五年間の空白を背負ったまま、あの場に留まる事は俺にとってただの苦痛だったし、どれだけ足掻いても手に入らないあいつを見ているのは自尊心を踏みにじられるに等しかったからだ。
追い打ちをかけるように週末、Aとデクが二人そろって姿を消した。
丸顔が通りすがりに「さっきデクくんがきれーな女の子に連れ去られちゃったんだけど！なんかさ、すごくない！」と騒ぎ立ててきた辺りから、いやな予感はしていた。
仕方なくデクの家に行けば、Aの家に泊まりに行ったのだと母親が言い始める始末。
あいつが家に人を呼ぶ？ありえない。
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23.4度(プロフ) - ましろんぬさん» 他も見てくださったんですか....泣ありがとうございます！ご感想本当に励みになります！ (2017年10月12日 19時) (
レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
23.4度(プロフ) - ぼうﾆﾝさん» 遅くなり申し訳ないです！こちらでもコメントありがとうございます...!!ご感想頂き本当に嬉しいです。ついったーの方でもよろしくおねがいします！ (2017年10月12日 19時) (レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
ましろんぬ(プロフ) - 素敵なお話ですね。他の作品も好きです。更新頑張ってください。 (2017年10月9日 0時) (レス) id: 1785f6c6df (このIDを非表示/違反報告)
ぼうﾆﾝ(プロフ) - キャラの矢印の方向やストーリーがどすとらいくすぎて感動しました泣 これからも応援しています!! Twitterでイラスト拝見させていただきましたが､小説もクオリティ高くて尊敬しちゃいます~!! (2017年10月5日 21時) (レス) id: 64374fa942 (このIDを非表示/違反報告)
23.4度(プロフ) - お気に入りありがとうございます！更新滞り気味で申し訳ないです...。この後もお付き合いいただければと思います！ (2017年9月30日 17時) (レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：23.4度 | 作者ホームページ：http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時：2017年9月7日 20時
