自嘲 ページ24
かっちゃんの部屋に押し込められて、そこで初めて詮索されないよう連れ出してくれたんだと気づいた。
お礼を言うタイミングを探る最中で、「おい」と不機嫌そうにいうかっちゃんに先を越されてしまう。本人も覚悟はしていたようだけど、やはり母親にああだこうだと言われるのは良い気分はしなかったみたいだ。
「お前今日はもう帰んな。」
あからさまに顔を顰めながら、そう言う。
「でもなんにも持ってきてないよ？」
「こっちにあるもん適当に使え。」
「....なんで？」
「いいから言う通りにしろっつってんだよ。」
質問反論を一切つけつけない彼は、それだけ吐き捨てて自分のクローゼットを漁り始めた。
すると真っ黒なTシャツと短パンを取り出して、私に投げつけてくる。頭の先からすっぽり服に覆われて、途端に遮られる視界。
ふわりと鼻をかすめるのは紛れもないかっちゃんの匂いで、柔軟剤と彼の髪が混じったようなそれに、思わずTシャツを両手で握った。
無意識のうちに覚えて、どうしようもなく安心してしまうようになった彼の存在を確かめるみたいだ。
「風呂入るんならあいつの着替えでも借りろ。今はそれでいいだろ。」
「別に制服のままでもいいのに。」
「スカートのまま寝っ転がんのが目に見えてるから言ってんだよ、いいから早く着替えろ。」
「........はーい。」
若干言いにくそうに1音分の空白を開けてからそっぽを向く仕草は、私たちの未熟さを象徴していて、高架橋下の時みたいにいずれ幼馴染みでは収まらない感情が芽生えてしまうことを示唆しているようだった。
いや、もしかしたらもう、手遅れかもしれないけれど。
・
・
・
天井を向いてシャワーを浴びれば、顔に降り注ぐ水滴が心地いい。
他人の家の風呂場はどこか落ち着かなくて違和感が常に付きまとってけれど、それより壁何枚か向こうにかっちゃんがいるんだという妄想の方が私の思考をかき乱していた。
充満する水蒸気に意識を朦朧とさせながら一本の映画を見るみたいに過去を回想する。
頬にへばりついた髪も、大粒の雫を垂らす睫毛も。あの頃より熟した姿がそこにあって、結露を拭き取った先にはただそれらが虚しく映り込んでいるだけだ。
今頃デクくんは何してるかな。
ふと浮かんだ一言があまりにも変わらなくて、それでいて全く私は懲りていないようだったから。
1人浴室で自嘲した。
終わり
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23.4度(プロフ) - ましろんぬさん» 他も見てくださったんですか....泣ありがとうございます！ご感想本当に励みになります！ (2017年10月12日 19時) (
レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
23.4度(プロフ) - ぼうﾆﾝさん» 遅くなり申し訳ないです！こちらでもコメントありがとうございます...!!ご感想頂き本当に嬉しいです。ついったーの方でもよろしくおねがいします！ (2017年10月12日 19時) (レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
ましろんぬ(プロフ) - 素敵なお話ですね。他の作品も好きです。更新頑張ってください。 (2017年10月9日 0時) (レス) id: 1785f6c6df (このIDを非表示/違反報告)
ぼうﾆﾝ(プロフ) - キャラの矢印の方向やストーリーがどすとらいくすぎて感動しました泣 これからも応援しています!! Twitterでイラスト拝見させていただきましたが､小説もクオリティ高くて尊敬しちゃいます~!! (2017年10月5日 21時) (レス) id: 64374fa942 (このIDを非表示/違反報告)
23.4度(プロフ) - お気に入りありがとうございます！更新滞り気味で申し訳ないです...。この後もお付き合いいただければと思います！ (2017年9月30日 17時) (レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：23.4度 | 作者ホームページ：http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時：2017年9月7日 20時
