怒涛 ページ21
私は言われた通り、月曜の放課後かっちゃんの家へ向かった。
すれば既に到着していた様子の彼が玄関先で待ち構えていて、「遅ェんだよクソがッ！」と理不尽の怒鳴られる。
ずり下してはいたズボンとか、ポケットに突っ込まれた両手とか。
名門雄英の制服を纏っていても、やはりそれらが彼をかっちゃんたらしめていたし、不良感否めない風貌に仕上げていた。
「...てめぇほんとに高校通ってんのか。」
「うん。だってかっちゃんとデクくん周辺の人間から私の記憶を消しただけで、実際には引っ越しただけだもん。」
「引っ越した"だけ"ってんなら、何処に引っ越したのかと理由も言ってみろよ。」
「意地悪だなぁ。」
そんなの、察してよ。
ワザと痛い所を突いてくるかっちゃんは、やはり先日の取引に納得していないようだ。
一か月の自由と引き換えに五年間についての詮索はしない。
加えて期限日には全てを告白する。
かなりの妥協を重ね、こちらに大分不利な条件を提示したつもりだったのだけれど、やっぱり彼は欲張りだ。
「家はあんのか。」
「もちろん。駅前のマンション借りてる。」
「親は？」
「...どこにいるかはわかんないけど、生きてる。」
「一人で住んでんのか？」
「うん、まあ。」
「飯はちゃんと食ってんのかよ。」
「お金ならいくらでもあるし。自炊できるし。しっかり食べてるよ......っていきなり怖いよかっちゃん。」
帰省した娘と対峙する母親でもあるまいし。
一歩ずつ着実に距離を縮め、ぐいぐいと迫ってくるかっちゃん。その意図は読み取れない。
まるで私を気遣うみたいな質問の数々に動揺を隠しきれなかった。
ぎらついた高圧的な目線につい萎縮してしまう。
「なら、うちこいよ。」
「....？もう来てるじゃない。」
「ッちっげぇよ！！俺の家に住めっつってんのがわかんねぇのか！」
「いやわからないでしょ！」
これだけ声を上げてもかっちゃんのお母さんが怒鳴り込んでこない辺り、家には誰もいないのだろう。
不穏な言動が目立つ私たちを、通りがかりの主婦が凝視していくのがわかる。
「親御さんにはなんていうの！？」
「喧嘩して家出中だから泊めてやる。」
「いやっ普通男友達の家来ないでしょ！？」
「なら男友達じゃなきゃいいんだろ？得意じゃねぇかお前、偽物の恋人つくんの。」
「でも...。」
「でもじゃねーんだよ！お前俺の命令何でも聞くっつったよな！？忘れたとはいわせねーぞ！」
これだからかっちゃんは。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 146人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
23.4度(プロフ) - ましろんぬさん» 他も見てくださったんですか....泣ありがとうございます！ご感想本当に励みになります！ (2017年10月12日 19時) (
レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
23.4度(プロフ) - ぼうﾆﾝさん» 遅くなり申し訳ないです！こちらでもコメントありがとうございます...!!ご感想頂き本当に嬉しいです。ついったーの方でもよろしくおねがいします！ (2017年10月12日 19時) (レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
ましろんぬ(プロフ) - 素敵なお話ですね。他の作品も好きです。更新頑張ってください。 (2017年10月9日 0時) (レス) id: 1785f6c6df (このIDを非表示/違反報告)
ぼうﾆﾝ(プロフ) - キャラの矢印の方向やストーリーがどすとらいくすぎて感動しました泣 これからも応援しています!! Twitterでイラスト拝見させていただきましたが､小説もクオリティ高くて尊敬しちゃいます~!! (2017年10月5日 21時) (レス) id: 64374fa942 (このIDを非表示/違反報告)
23.4度(プロフ) - お気に入りありがとうございます！更新滞り気味で申し訳ないです...。この後もお付き合いいただければと思います！ (2017年9月30日 17時) (レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：23.4度 | 作者ホームページ：http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時：2017年9月7日 20時
