忘れてしまいそうな愛を (ページ5)

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　４話ページ5

にこちゃんマークのバッチがついたグレーのニット帽に、だぼっとしたグレーのスウェット、日本から輸入されたという昇り竜が描かれたナイロンのジャケットを着て、黒の革のスカートを履いて素足をさらけ出している。

　真っ赤なコンバートのスニーカーは、踵が踏み潰されて形が崩れている。不細工だ。

　後部座席の真ん中に座る不良グループのリーダーがむんずと立ち上がる。そして一歩一歩俺の方に歩み寄った。年は１コ上で先輩だ。

　黒人で真っ黒な肌をしており、Danceと黄金で描かれたキャップを被り、顎髭をはやし、汚れたり皺になったりしている服を着ている。

　スリーサイズも大きいジーンズは引き締まった上着とは合っていなかった。

　「ほー、おー、イアン、今日はマウスグレイのシャツに、白と黒のジャケットかぁ。ダサいお前にはよくお似合いのファッションだな！

　ぎゃははははっ！」

　「ほー、おー、おーけー。よく覚えとくよ」

　「いっつも白と黒のだっさいジャケットだぁ。お前の家は貧乏だもんな」

　後ろの席の皆がわっと騒ぎだし、手を叩いて笑った。

　「おっと、今日は木曜日じゃなかったか？お前から金を貰う日だ」
　「そうだよ！私がいっつも席をとってやってんだ。感謝しなっ」
　「今日は……、そうだな。30ドルで勘弁しといてやるよ」

　俺は腰を曲げてリュックサックのチャックを開け、財布を取り出した。その間に、俺を罵る言葉が幾つも聞こえて来た。

　バスケも出来ない、数学は赤点、彼女がいない、足が遅い、もう沢山だ。

　俺はリーダーのプラムに30ドルを突き出した。それを見たプラムは、唇をとんがらせ、30ドルを奪い取るように取ってジャケットのポケットにしまった。

　「あー、反抗の目をしている。高校生にもなって反抗期かな？」

　そう言って通路を両手を上げてゆっくりと歩き出した。皆の視線を集めているようだった。

　「駄目だなぁ。将来ナンバーワンのギャングになる俺にそんな目をしちゃ。

　罰ゲームをする」

　また喝采が起こった。俺はそれが阿鼻叫喚にしか聞こえなかった。