忘れてしまいそうな愛を (ページ4)

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３話　イアンとネイトページ4

スクールバスはお菓子とホットドックの臭いが立ち込めていた。毛穴を開かせる程の熱気が首や顔に生暖かく当たる。鼻をつまみたくなるような環境だ。

　ホットドックやお菓子の包み紙が散乱し、それを踏むのは毎日のことだ。ネイトは母から、同級生の女の子達の近くに座るように言われてた。

　ネイトは女の子達の所で足を止め、奥にひとつぽかんと空いている席に足を運んだ。

　ネイトの周辺の女の子達は、ピンク色に着飾り、ぷんぷんと香水までつけている不良だ。そこに眉をひそめて、でも口角を上げながら妹は座っていた。不自然な笑みを浮かべていた。

　「ハイ。コーネリアン、アナ、エミリー、ダリラ」
　「ハァイ」

　彼女達は面倒臭そうに挨拶をして、ネイトを座らせた。お互いに良い感情は抱いていないように見える。

　

　俺は一番後ろから２番目の座席だ。いつもそこだって決まっている。身体の大きな高校生がどっしりと腰を低くして座り、俺を睨んでいた。俺はためらわずにリュックサックやボストンバックをよけて後ろへ進んで行った。

　後ろへ近づくたびに中学生や高校生と年齢が高くなり、大人のフェロモンのニオイがキツくなってきた。

　淡い恋心を寄せている、ウィニーを一瞥する。ウィニーは少しだけ俺と視線を合わせ、心配そうな顔付きをして目線を逸らした。

　ウィニーはフローラルの香水をつけているのか、仄かに匂った。整ったストレートの金髪は背中まであり、大きく、女の子らしい優しさを持った目は青色に輝いている。

　透き通った柔らかそうな肌と、ユニコーンカラーのオレンジはよく似合っていた。ほっそりとした脚にギャップのジーンズを履かせている。色気とあどけなさが醸し出されている。

　俺はグレーのリュックサックを降ろして２番目の席に座った。

　隣にいる紫のガムを膨らませていた女が、それを口にしまい、

　「お前の席、このアタシがとっておいてやったぜ!! 感謝しな」
　「ほー、おー、ありがとう」
　「きゃっはー！ありがとう、だってさ！私って良いヤツ？」

　ガム女は上体を起こして後ろの席に振り返り、不良の仲間にそう尋ねる。ガム女は可愛い顔をしているが、やはり不良であることは滲み出ている。