いろいろ魔法【ＱＫ＊短編集】 (ページ21)

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Subject１２　同音異義語　kwmr ページ21

　

「最近このブランド流行ってますよね、知ってます？」

　
　

　

　
　

そう言って霞ちゃんが差しだして来たのは、下向きの三角形の中に「？」と「guess」と書かれているスウェットだった

　

何が「？」なのか分からない。たぶんそういうデザインなんだろう

　
　

　

「.....ピンとこない顔してますね」

「いや、疎いから.......こういうの」

　
　

霞ちゃんは、そうですよね、とゆっくり言った後、高級ブランド(？)あるあるな無駄に角ばった小さな紙袋に大事そうにしまい込む

　

　
　

「誰かにあげるの？」

「いや、自分用です。早めのクリスマスプレゼントってことで」

　

　
直し終えてデスクにまた丁寧に置くと、僕の方に向き直る

　

　

「ゲス、ですよゲス。今ティーンが着ているのよく見ません？」

　
　
　

　
　

撮影までまだありますし、ティーンブランドのテストしましょう、と彼女は呟くと、カフェオレを一口含む

いやあテストしましょうとか言われたって、自分は全く知らないわけで

　
　
自分が良く買う服屋やブランドしか縁のない自分にとっては、欠点が見え透いている

　

　

　
　

　
　

「取敢えず、ゲスって知ってます？」

「ゲスい――――――――――――性格上宜しくない人の事？それが元？」

「それをモチーフにしていたのなら私は絶対買わないですけど」

「ゲス？」

「そう、ゲス。Guess！！！」

　
　

素晴らしい発音でさらりと言われても、思いつくのは「推測」か「下衆」しか思いつかないわけで

というかこの「ゲス」ってさっきどこかで見たような

　
　

　
「下衆男とか、古典の下衆では無いよね？」

「当たり前じゃないですか.......っていうかどんどん話それてません？」

　
　

服のブランドです服のブランドっ、と困惑した声が返って来ると同時に理解する

　
「ああ、さっきの逆三角形の？」

「そうそうそう！！やっとわかったんですね！」

　

皮肉を何パーセントか含んだ声が返って来る

そう言うのをゲスって言うんだよ、霞ちゃん

　
　

　
　

　

「....霞ちゃんは僕の思いなんか全くGuessしてくれない鈍感だよね」

「何か発音良いのが腹立つ―――――――――って何て言いました今？」

　
　

　
　
　

僕は霞ちゃんの返事を聞こえていないフリをして、席を立つ
　

　
　

　