いろいろ魔法【ＱＫ＊短編集】 (ページ3)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:58,621 hit

Subject２　何食わない男も食う結末　kwkm ページ3

　
　

　

　

撮影部屋のセッティングが終わって部屋を出ると、霞ちゃんと福良さんと須貝さんが何やら近くに集まっていた

集まっているというより、福良さんと須貝さんが「霞さん観賞会」みたいな感じで彼女をガン見している

　

　

　

彼女も見られて気の毒だろうな、と彼女に目を向けると、いつもと違う違和感に気づく

　
　

　

　

髪色が、黒になっていた

　

彼女はもともとダークブラウンの髪色だった

けれど今日、この今、自分の目でもう一回見てみてもやっぱり黒髪だった

　
　

　
さらさらとした彼女の髪が微かに吹く暖房の風で靡く

　

彼女に話しかけようと体を動かそうとすると、肩に手が置かれる「ナンジャモンジャしない？」

　

声の主は伊沢さんだった

露骨に「霞ちゃんに語りかけに行こうとするな、狡い」というオーラが出ている

　

仕方なく身を引いて「良いですね。今日水上さんもいますししましょう」と思ってもいないことを言う

それが中身のない言葉だと気づいているのか否か、伊沢さんは満足してデスクへ向かって行った

　
　

　
　

　

「そういや霞さん、本当に黒髪似合ってるよなぁ」

　

　

　

心に思っていたことが、黒髪になった彼女への感動が大きくて口から洩れる

隣に居た水上さんが「分かる」と短く呟く

　

　

　

しかしまあ、何で急に黒髪にしたんだろう

俺がつい最近「黒髪似合いそう」と打ち上げでぼんやりと言ったのを覚えている

　
　

　

それが元で黒にしたのなら、とふと思う

　
けど違うだろう、多分ブラウンが飽きたからだろ、と無理やり排除する

じゃないとやっていけない、今日一日を

　

彼女が俺を意識して変えたのなんて事を本気で思ってしまっては

　
　

　
頭から振り切って、今度こそ霞ちゃんに近づく

彼女は何やら一生懸命ルーズリーフにまとめていた

　

　

そしてふとルーズリーフに目を落とした時に、漢字のミスを発見する

漢字が苦手、と言っている彼女は毎回一個はミスがある

　

「黒髪似合ってるやん」

　
急に近づいて間違いを指摘すると張り付いていたようで気持ち悪いと自分で思ったので、取敢えず言葉を探して言った

　
　

　
　

　

.......それが「黒髪似合ってるやん」なんてほんと勘弁してほしかった。本当に。