いろいろ魔法【ＱＫ＊短編集】 (ページ18)

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Subject ページ18

　
　
　
　

　

　

　

　

「覚えてますよ？」

　
　
　
　

　

そう言って不思議そうに笑う

　
「一昨日靴を落とした時、シンデレラ発言した人でしたっけ」

「......あっ、そうです。あの時はすいませんでした......」

　
九十度にお辞儀して頭を下げる

けど彼女は、顔色一つ変えずに「いえ」と短く呟く

　

　
　

　

　

　
　

「シンデレラって、私が小さい頃から憧れてたプリンセスだったので、嬉しかったです」

　

　

そういってにっこりと笑うと、腕時計を見る

　
　
「そうなんですか.....。というか誰か待ってるんですか？」

「ちょっと知人を待ってて。けどあと一分で始業するのに来ないからもう放っていきます」

　
　
彼女はそうまた困ったように笑うと、スマホで短くメッセージを打って、鞄に直す

　
　
　

「........十分くらいで着くって行ってたのになあ」

「あの」

「あ、もう少しで始業の鐘が鳴るんですけど、大丈夫なんですか？」

　
　
　

　

俺への心配が、俺の言葉を遮る

　

　
大丈夫じゃない、次の授業は絶対に遅れられない授業だ

珍しい教授が来るとかで、結構参加人数の多いと聞いている

　

けど、ここで逃したら

　
　
　
　

　

「名前、教えてくれませんか」

　
　

　

名前なんか知ってどうするんだろう、それだけじゃもう会えないかもしれないのに

けど今はそれくらいしかできない

　
　
　
　

シンデレラが去ってしまう鐘が、もう直ぐ鳴る

　

　

　

「私は貴方の事知ってるんですけどね、須貝さん」

　
　

　
は、と口から洩れる

　

　

　
　

　

それと同時に、鐘が鳴る

始業の合図が、キャンパス内に響き渡る

　

　

「まあまた近頃会うと思います」

　

　
　

　
　
　

　

彼女はそう言うと、フレアスカートを靡かせて足早々に去って行く

　

　

　
そしてふ、と足を止めると、くるりと振り返る

　

　
　

　
　
「遅れますよ」

　
　

　
　
　
　
　

　
　

シンデレラはそう言うと、綺麗な笑顔で微笑んで去って行く

　
　

　

　
彼女の履いているハイヒールが、きらりと輝いた
　