いろいろ魔法【ＱＫ＊短編集】 (ページ17)

今日:8 hit、昨日:0 hit、合計:58,625 hit

Subject ページ17

　
　

　
　

　
　
　
　

　

靴を本当に落とす人を、目の前で見た

　
　
　
　

現実離れだと、現実離れしすぎだと鼻で笑っていたことが目の前で起こってから、俺の頭は授業も集中できないくらいにその映像で占められていた

　
　
しかも大きな声で「リアルシンデレラ」なんて言ってしまったし

否定する気はない、出来事と顔と容姿と合わせて本物のシンデレラと言っても過言では無かったから

　

せめて、名前でも聞いておけばよかった、と後悔する

偶然すれ違っただけなのに名前を訊くのは変態(？)かもしれないけど、本当に

　
　

　

　

また会えないかな、シンデレラ

　

そう思って俺は、ベッドにもぐりこんだ

　

　
　

　
　
　

―――――――――――――

　

　

　
　
　

　
　
　
　

いやはや偶然か

　
　
　

「シンデレラ事件」の翌々日、あの少女をキャンパス内で見かけた

「た」じゃない「なう」か、今少女は柱に寄り掛かる様にして立って、誰かを待っている

　

　

　
　

話し掛けたい

そんな気持ちが疼いて疼いてだんだんと高まって溢れそうになる

　

　

もしかして彼氏を待っていたりするのかもしれない

そうなったとすれば多分あの少女に話しかけに行った俺の首は飛ぶだろう

　

　
　

けど、良いだろ、少しくらい

シンデレラは鐘が鳴ったら消え去ってしまうんだから

　

　

　

　
　

　

「―――――――あの」

　
　
　

第一声が格好悪いほど上ずって裏声になる

羞恥過ぎて顔が真っ赤になって行くのが判った

　
しかも何言おうとしていたかも忘れたから、泣きっ面に蜂なわけで

　
　

　

「はい？」

　
　

彼女は首を傾げる

待ってください、不審者じゃないんです、須貝と申します、東大博士課程です、って言え、俺

　
頭の中ではすらすら出てくる言葉が出てこない

　
何でなんだろう、即興は得意なのに

昨日Line電話でこうちゃんと「キズナアイ面接」を深夜テンションでやったときはキレキレだったのに

　

　

　
　
今何で、台詞を忘れてしまった今何も出てこないんだろう、こんな時に限って！！！

　
　
「どうかしましたか？」

「あ、いや、覚えてますか？」

　

完全に変態だ、と失望した俺に、彼女が口を開く

　
　
「覚えてますよ」

　
　

　