いろいろ魔法【ＱＫ＊短編集】 (ページ16)

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Subject１０　スニーカーを履いたシンデレラ　sgi ページ16

　
　

　
　
　
　
　
　
　

　

　
シンデレラ―――――――――――――

　
　

硝子の靴を落とし、王子が拾い、ぴったりとサイズが合ったそれがシンデレラだった

　

所詮昔の話だと思っていた

大体靴をどうやって落とすんだよ、そこからいつも始まった

　

　

しかも原作では姉が踵を斬り落とそうという結構グロテスクな話なのに、リメイクされてキラキラになって「ゆめかわいい」話として載っているのに辟易した思い出しかない、シンデレラには

　

心底馬鹿にしていた、鼻で笑っていたといっても過言ではない

白雪姫、人魚姫、その類は好きだったのに、なぜかシンデレラだけはそんな理由で好きになれなかった

今思えば、落ちこぼれみたいな考え方だなあと失笑してしまう

　
　
けど考えてみてよ、靴を落とすとか

　
　
どういうシチュエーションだよ、なんて思うじゃん、普通

ティアラとかじゃなくて、ガラスの靴

　
　

靴を落とすなんてどういう状況だよ、そう思っていた

有り得ない、いかにも現実離れした事だって

　

御伽噺は全部架空だけど、さ

　

　
　

　
　

　

　
　

　
　

　

　
　

「――――――――ああああっ」

　

　
　

　
　
　
　
　
　

　
教室へ行こうと階段を上っていると、上から声と同時にスニーカーが降ってきた

　

　
スニーカーはリズムよくバウンスして階段を転がり、踊り場に落ちる

綺麗な真新しいコンバースのスニーカーは踊り場で二三回回転したと思うと、やがて止まる

　

「あー・・・やっぱりサイズミスっちゃったか」

　
手すりをもって、けんけんで階段を器用に少女がおりてくる

靴を実際に落とすシチュエーションがこの世に存在するなんて事に驚いて口をあんぐりとあける俺に一瞥もくれずに踊り場に降りると、スニーカーを拾った

　

　

「やっぱり24.0にしておくべきだった・・・・・」

「リアルシンデレラ・・・・・」

「へ？」

　
　

　

心の声が漏れ出て大きな独り言化する

しまった、と思って口を急いで塞ぐももう遅い

　
　
その少女ははてなマークを浮かべ、不思議な表情で俺を見据えた

　
　

　

「りあるしんでれら？」

「あ、いや、すいません」

「だったら靴拾ってくれたらよかったのに」

　
　

彼女はそう悪戯っぽく笑うとスニーカーを履いて、再び階段を上って行った
　