喧嘩するほど仲が良いって訳じゃない 【ＱＫ】

１３％　先輩後輩は噛み合わない ページ13

　

　

　

　

　
　
　

　

「......ないよ」









　
　
　
　

　
　

　


今までに見たことのない、哀しい顔






　
そして目を逸らすと、何事もなかったかのように残りの問題に取り掛かる









　
　
　


　
　
　

　
　
　
　

ああ、あるんだ









　
　

分かりたくなかったのに、自分で扉を開いちゃった

こんな結末なら、開けなくて、知らなくて、一生知らないまま過ごす方が良かったのに


　


開けてしまった中身はもう忘れられ無い、扉を閉めても蘇るから






　
　

　
「出来た、Aさんはどう？」







　

何も無かったように







　
「私もできましたよ、扉の外に置いときましょ」







　
何も無かったように






　
「じゃぁ置いてくるね〜。隙間から通すの難しそうだなぁ....」






　

何も無かったように







　

「確かに、ちょっと狭いですもんね」









　
　
　
　
　
　
　
　



何も無かったかのように、振舞わないといけないのに









　
　
　
　
　
　
　
　
　


多分これは撮影だから、たぶんというか絶対に隠しカメラがまわっているだろう

撮影なのに、大きな存在のＱＫの大事な動画撮影なのに、何でぶち壊したんだろう
　
　
　
　
　
　

　

こんな話、外でやればよかったのに








　
なのに――――――――――――――――――









　
　
　
　

　
　


　
　


　
　
　
　

「何か乾が気づいてくれたよ。あっまだ乾の事知らないっけ？」





　

　
　
　
　

　
　
　
　

　
　
　
　
　
　

　
　
　
　
何で、涙が出るんだろう






　
　








　
　
　

　
「いえ、知ってます。経済学部の乾さんですよね」









涙が手の甲に落ちる

駄目だって、今は撮影、撮影だから







　
　
　

　

　
「そうそう。こうちゃんと同じ県出身なんだって〜。最近知ってさ」







　


　

山本さんは気づいているのか気づいていないのか、何もなかった振りして話す

こういうのが大人なんだろう、まだまだ子供の私にはできない術を山本さんは身に着けている





　

「群馬県ですよね」






　
出来るだけ、笑顔で、何もなかったように話さないと





　

　
　

　
　

そう決心して顔を上げたのと、山本さんが口を開いたのは同時だった







　
　
　
　
　
　

「Aさん、ごめんね」

　
　
　
　
　

　
　
　

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