【ωrωrd!】サロメの盲愛【短編集】 (ページ9)

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中学3年生になったくらいだろうか。
ぼくは受験生で親からタブレットを取り上げられていたし、隠れてインターネットをするにもリスクがある。高校なんてどこでもいいと思っていたから自分の将来の為に勉強をしていた記憶はない。どうやってあの土の下に戻れるのかを考えていた。
受験が終わる頃に、また彼女と再会した。相変わらずユーザーネームは変わっていたけれど、彼女はまだぼくのことが好きだった。その頃にはもう何年も付き合いがあったぼく達はお互いを熟年夫婦のようだねと言って浮かれていたし、その頃には喧嘩をすることもめっきりなくなっていた。もう、ぼくらはそんな歳じゃなくなっていたのだ。
高校生になって、ぼくはついに自分の携帯電話を手に入れた。もうあの頃のクソサイトは過疎化が進んでいて、みんな青い鳥に流れた。青い鳥に流れてからも、あの頃の知り合いはそれなりにいた。勿論、彼女も。
その頃にようやく、ぼくらはお互いのスマートフォンで通話が出来る手段を持ったし、無料でできるメッセージ通話アプリだって交換した。でも、ぼくらは一度だって使ったことはない。今もトーク欄のいちばん下に彼女がいる。
新しいSNSに移ってから、みんな変わった。広い世界だったからかもしれない。ぼくは生まれて初めて触るインターネットがここではなくて良かったと心から思った。僕の黒歴史はちっぽけなwebサイトの奥底に眠っているけど、こんな場所でポカをやらかしたら、きっと二度とインターネットなんか触る気になれないだろう。
高校生になったぼくは相変わらずつまらないキッズみたいにゲームのガチャでイキリ散らかしていたけど、彼女は随分大人びて見えた。知らないアイドルの推しとか、韓国のコスメとか、クラスの気になる男子とか、まるでクラスの女の子みたいなことを言う。いや、確かに彼女も同じ年代の女の子なんだから当たり前だけど、気に入らなかった。ぼくとはもう別の次元を生きる人のように見えた。
段々とぼくのいない世界で充実したリアルを生きる彼女を見るのが嫌になって、はじめてぼくの方からアカウントを消した。

彼女がそれに気がついたかどうかなんて分からない。
ほとぼりが冷めて戻ってきた頃には、今度は彼女がこの場所には戻らない人になっていた。

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