【ωrωrd!】サロメの盲愛【短編集】 (ページ8)

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彼女は年の割に少し大人びていたところがあったけれど、ぼくの前ではそんなこともなかった。ぼくの方がひとつ年上だったからかもしれない。彼女はクールで知的で、世渡りが上手かったけれどぼくの前では少し甘えたで、分かりやすく言うとめんどくさい彼女みたいだった。
昔流行ったペア画とかペア名とか、そういうのが彼女はあんまり好きじゃなかったからぼくは別の仲良い人と結構してたけど、そういう時に限って彼女はすぐアカウントを消す。多分拗ねてたんだと思う。自分は嫌いなくせに、自分がやらないことを多分ぼくにもやって欲しくなかった。今考えるとなんて自分勝手なんだと思うようなこともあったけど、ぼくはそういう彼女のわがままなところが可愛らしくて、愛おしくて、仕方なかったのだ。
彼女がぼくにさようならを言った回数。数えてないけど、両手じゃ足りない。ぼくはその度に彼女の茶番に付き合ったし、正直ぼくだって本気でさようならをしてやろうと思ったことは何回もあった。でも、新しく別の名前で他人のフリを土の下に戻ってくる彼女を見ると、どうしても愛おしくなって、許したくなって、決まってごめんねを言うのはいつもぼくの方なのだ。
ぼくは他人に興味なんて一切なかったし、来る者拒まず、去るもの追わずでいることがかっこいいと思っていたから("半分まともな大人"の受け売りだったけど)基本的にインターネットで関わった人なんて誰も覚えていないし、ぼくを捨てて消えていった人を思い出そうとも思わない。だからやっぱり、彼女だけは特別だった。
彼女がアカウントを消すと、ぼくは血眼になって彼女を探す。名前もプロフィールも喋り方も、全然違うひとのことを探すのは難しい。しかも、昔は今みたいにスレッドが流れるのに3日も4日もかかったりしない。1分、2分で、今書き込んだスレッドが2ページ目に行くような時代だった。
それでもぼくは何度でも彼女を見つけた。それは彼女の妥協によるものではない。ぼくの愛だ。そうして、彼女の愛だった。
ペア画もペア名も嫌いな彼女とぼくが唯一お揃いにしたものは、職業欄に咲かせる花の絵文字。流行ったよね？昔のインターネット。相棒関係とかさ、ぼくらの関係は恋人ではなくて、相棒だった。プロフィールに咲く花のおかげで彼女が何度生まれ変わっても、ぼくは運命のように彼女を見つけた。ぼくの運命はいつだって彼女の傍にあった。あの時のぼくは、明日のことなんてきっと分からなかったけれどそんな日々がきっと死ぬまで続くんだろうと漠然と思っていたのだ。

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