【ωrωrd!】サロメの盲愛【短編集】 (ページ4)

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ネトスト/ut 研修生ページ4

別々の戦場に生きた見えないあなたの薬指
ぼくのものでなくても、おんなじように死ぬだろう

WiFiモデルのタブレット。投げ出した痣だらけのランドセルと、机の上に置かれた500円。ペンは剣よりも強しとは言うけれど、指先が銃口に掏り替る時代がやってきた。言葉は世界のすべてであり、ぼくのすべてはあなたであったのだ。
銃弾の雨の中で繋いだ手を、あなたは覚えていただろうか。
喉元に絶望を突きつけた夜明けの先で迎えたぬるま湯みたいな朝のちいさな幸福感を、あなたは愛していただろうか。

彷徨うならば地獄で、願うならば死体になって。
あなたの銃口からもう一度、あの日のこたえが聞きたい。

インターネットとは、現実で死んだちっぽけな魂たちが彷徨う掃き溜めみたいな人生の墓場だ。指先ひとつでひっくり返る世界のなかで、死体になったことにも気がつかないで、ぼくらにとっての戦場というのはネットワークという名の土の下にあった。
たとえば防弾チョッキを着て、弾除けのヘルメットを被り、短機関銃を背負って、愛と正義のために出向くような場所なら、過去の栄光を掲げるにも大層な自慢話が出来たかもしれない。けれど、実際に着ていたものはアニメアイコンと下手くそな加工。偽った年齢のプロフィール欄は中身のない思想を差し引いてぼくの年齢だったし、抱えているのはお下がりのAndroidスマートフォン(ROM32GBでRAM3GB)とフィルタリングサービスのかけられたタブレットだった。小説の一説に並ぶような比喩にしたって、格好つけが過ぎる。何より、ネット小説ばかりを読んでいたあの頃の少年は、イカした比喩表現なんてちっとも考えつかなかった。
こういう話をすると、大概これを見る死骸は鼻で笑う。君、君たちね。人のことを馬鹿だと言うけれどこういう経験とは誰にだってあるものなのだ。半年ROMれなんて言葉は随分と昔に死んでしまったが、実に賢い先人の知恵だった。ネットリテラシーの欠片もないイキった餓鬼の守り方なんてパパもママも先生も教えてくれないということをどうか覚えていて欲しい。子供に並んでアニメアイコンぶら下げてる大人たちは決して君たちに優しくない。善人面して近づいてくるやつは君たちの味方じゃない。器の狭い兵士達の戦場で君たちは良い的である。ここはそういう世界だ。

そうして、どうか忘れないで欲しい。
おなじように、いつかそういう大人になってしまうことを。

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