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希望の世とは
我々に都合の良い世界のことをいう。

青く澄渡る空が、ごうごうと燃えるような赤色に染まるさまを眺めて、理想とは所詮子供の絵空事に過ぎなかったのだと、トントンは懐かしむように嘆息をひとつ落とした。

「哀れんだらあかん」

手を繋いでいた。白い肌に、シルクの滑らかなシャツ。ベリー味の甘いあいすくりぃむをぺろりと舐めて、薄い瞳の色はまるで流れ星でも見つけたような顔をする。弾むような声は小鳥が囀るように軽やかであった。

「あわれむってなぁに」
「さぁ、悲しむこととおんなじやないかな」
「ふぅん……トントンは、物知りだねぇ」

積み上げられた人の山を、ものを見るような瞳で見つめている。助けてくれと願う声と、かえしてくれと叫ぶ声、小さな子供は飢え死んで、枯れ木のような老人は凍え死んだ。ここはそういう場所で、世界は変わらず回っていく。
脳天気な顔で地獄を眺めた大人のことを、豚だと罵った子供がいるなら、トントンはやさしくそれを諭すだろう。君もいつか、分かる日が来ると。

多くのものは救えない。
守るべき生活というのは常に自分たちの作ったちいさな箱庭の中にある。
ぼくたちは宝物を積み上げて、押し込んで、それが壊されないように、必死にぼくたちだけの世界を守り続けるのだ。

「ねぇ、トントン」
「なんや」
「あのひとたちは、きっとしあわせものね」

長い栗色の髪がふわりと風に靡く。花の香りがした。横顔はまるで絵画のように美しい。あの日の彼女の見窄らしさを知るものはきっともうトントンしかいない。

「雲って、とっても甘いんだって」

ゴミのように積み上げられた遺骸が燃やされていく。
肉の焦げる嫌な香り。黒煙が上り、あっという間に空を埋め尽くす。楽園が雲の上にあると言うなら、彼女の言うとおり、彼らは幸せだろうか。その答えを、知る由はない。
同じ運命を辿るべき筈だったあの日の子供が、ぼんやりとあかいろを見ている。

柔らかな手を繋いでいた。強く、離れないように。
ちっぽけな欲を抱えて、思い通りの世界を夢描く自身はきっと、豚のような顔をしているのだろう..

「わたしもいつかしあわせになるのね」

たとえば僕が聖人君子なら、ママのところに帰してやれたのだろうか。
或いは、君の願う空の上の幸せを選ばせてやれただろうか。

不毛なことを考えて、結局彼は手を繋いだ。
離れかけた手を、もう一度繋ぎ直した。

「やらんよ」

14歳の誕生日プレゼント。
僕の愛し方は結局、豚のような大人たちと同じところにある。

「おれのやから」

彼曰く、見上げた空は青かった。

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はにゃ(プロフ) - 切ねぇ!めっちゃ好き!(語彙消失) (7月31日 19時) (レス) id: 26eb3cf61d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:脳内お花畑、凄惨ペロ、研修生 | 作成日時:2023年6月30日 17時

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