episode 56 ページ25
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ふと夜中に目が覚める。
妊娠8ヶ月目に差し掛かりお腹も大きくなって、眠る態勢にも慣れてきた頃だった。
いつもは隣にあるはずの温もりがない。
それもそのはずで明日の定期検診に一緒に行くために、キヨくんは夜中に実況をとると言っていたから。
『キヨくん…、』
なんだか急に寂しくなって、実況をとってるであろうキヨくんの部屋に迷惑とわかっていながらも入る。
私に気づいたキヨくんは手を止めて私の名前を呼んだ。
「Aどした？寝れない？」
『んーん…なんか、寂しくなった』
「そっか、わりいな」
どうやら怖い話を読んでいたらしく、問題ねえからとキヨくんは毛布を取り出して隣に座るように指示する。
それに促されるように私はキヨくんの隣に座った。
「冷えねえようにこれかけとけ」
『ん、実況中にごめんな？』
「いいって、気にすんな」
キヨくんの肩に頭を預け目を瞑る。
やっぱり私にはキヨくんがいないとだめらしい。
隣にいるキヨくんの温もりに安心したのか、少しずつ眠気が襲ってきた。
「眠い？」
『ちょっとだけ』
「もー終わっからさ、ちょっとだけ我慢してて」
うるさいはずのキヨくんの声にすら安心感を覚えた。
キヨくんのアテレコ好きだなぁと思いながら、途中からしか聞いていない物語に自然と入り込む。
さっきからお腹が動いてるあたり、私と同じように我が子もパパの声に反応してるんだろう。
『めっちゃお腹蹴ってる』
「ん？…まじだ」
キヨくんの手が私のお腹に触れる。
胎動がわかるみたいで、キヨくんはふわりと笑った。
『パパの声、わかるんやね』
「俺とAの子供だからな、当たり前だろ」
実況を終えたキヨくんに手を引かれてベッドに潜り込む。
隣にキヨくんの温もりを感じながら再び私は眠りについた。
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作者名：ｍｉｌｌ | 作成日時：2021年3月12日 14時
