film 33 ページ33
．
「あ、そんなに嫌やった？俺と手つなぐの」
廉さんは
払われた左手を見て
はは、と笑う
「いや……そうじゃなくて…っ」
恥ずかしいからなんて言えなくて
私は黙ってしまう
「いいねんいいねん、ごめんな
気使わしたみたいやな」
優しい優しいその目に甘えて
私は、首を振った
「ほら、繋がんから ついてきてな」
そう言って少し前を歩いていくその背中は
高校2年の夏に見た
少し細くて華奢に見えて
だけどどこか、頼りがいのある温かい背中
甦る記憶が美しくて
私は瞬きをした
この瞬間はきっと残しておくべきだ
髪色が明るくなり
少し癖のかかったヘアスタイル
のほほん、とした歩き方
スタイルが良くて
通り過ぎる人が振り返るルックス
私の知らない 大人の廉さんは
今目の前にいる
私の目は彼を見るために存在しているんだ！！と言わんばかりに
廉さんを見つめて、記憶に残す
あぁ、今カメラがあれば
この背中を切り取っておけるのに。
「廉さん、カメラ持ってません？」
「え？なんやいきなり…スマホしかないけど」
そう言って黒のケースに包まれたスマホをポッケから出す
その仕草さえもかっこよく見えてしまった
「スマホ、という手があったか…」
私は自分のカバンから取り出して
廉さんにカメラを向けた
「え？なんや、俺を撮るんか？」
「1枚だけ。」
私がそう言うと
廉さんは笑って私のカメラを構える手を掴んだ
「俺だけやなくていいやん」
彼は私の手からスマホを取り
内カメラに変えて
「はい、チーズ」
と、耳元で言った
こんな路上で撮った写真ははじめてで
私の顔は、見事にカチコチだった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1376人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜木(プロフ) - 今更この作品を知った者なのですが、中盤から終盤にかけての衝撃の展開に驚かされました。本当に表現が豊かで読んでいて楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！ (2019年2月27日 11時) (
レス) id: bbfe081cd6 (このIDを非表示/違反報告)
めろ(プロフ) - 素敵な作品でした！本当に霞草さんの物語好きです！ (2018年9月2日 19時) (レス) id: acc3eee29c (このIDを非表示/違反報告)
VV(プロフ) - すごく素敵な作品でした！また読みに来ます！ (2018年9月2日 15時) (レス) id: 3eb9f16513 (このIDを非表示/違反報告)
霞草(プロフ) - ミイナさん» 嬉しいコメント、本当にありがとうございます(；＿；)頑張れます！！ (2018年9月2日 11時) (レス) id: ce88fc3806 (このIDを非表示/違反報告)
ミイナ - 言葉のセンスがものすごく私好みで、すごく面白かったです！これからも頑張って下さい！ (2018年9月1日 23時) (レス) id: 128b2b8258 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：霞草
| 作成日時：2018年8月26日 18時
