film 15 ページ15
．
夏の終わりの路地に
コツコツと、慣れないヒールの音が響く
久しぶりに会った
廉さんは
もう、あの頃の輝きをもっていなかったように見えた
それが何よりも苦しくさせて
私が持っていたあの写真が
モノクロになって
そしていつか色褪せたまま忘れ去られるような気がした
彼の瞳は静かで、
まるであの頃の瞬間を閉じ込めしまい込んでしまったよう。
職場のビルに着き
エレベーターを待ってると、
「A。」
後ろから名前を呼ばれ
多分、あの人だ。と予想しながら振り返る
「やっぱり、ジンか。」
ジンは大学の写真サークルで出会い
それからの仲だ。
高校の時と同様、あまり男の子と馴染めなかった私の壁を
ひょいと飛び越えた
廉さん以来の存在。
「やっぱりってなんだよー。
外回りどうだった？」
エレベーターが着き、ドアを抑え
私を先に乗せてくれる
「岸さんいたから平気だったかな？」
「へぇ〜。やっぱり岸さんすげえな
開発部でも大活躍してたって噂だぜ？」
「そうなんだ…」
おっちょこちょいに見えて
仕事はできる岸さん
だから人気者なんだよね。
「俺も頑張んねぇと」
目をキラキラさせるジン。
「気合い入ってんね。」
丁度ジンのオフィスの階につき
ジンが降り、振り返った
「あったり前じゃん！俺はこの会社で1番になんだよ」
グッとグーサインをしてみせるジン
あぁ、そうだった
廉さんも
こんな風に情熱を抱えた、熱心な人だった。
ジンの姿に残像を憶え
私は目を閉じた
あの頃の廉さんは
何処に行ってしまったのだろう
私は、何かを失くしてしまったような
そんな穴を抱きかかえ、エレベーターを降りた。
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夜木(プロフ) - 今更この作品を知った者なのですが、中盤から終盤にかけての衝撃の展開に驚かされました。本当に表現が豊かで読んでいて楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！ (2019年2月27日 11時) (
レス) id: bbfe081cd6 (このIDを非表示/違反報告)
めろ(プロフ) - 素敵な作品でした！本当に霞草さんの物語好きです！ (2018年9月2日 19時) (レス) id: acc3eee29c (このIDを非表示/違反報告)
VV(プロフ) - すごく素敵な作品でした！また読みに来ます！ (2018年9月2日 15時) (レス) id: 3eb9f16513 (このIDを非表示/違反報告)
霞草(プロフ) - ミイナさん» 嬉しいコメント、本当にありがとうございます(；＿；)頑張れます！！ (2018年9月2日 11時) (レス) id: ce88fc3806 (このIDを非表示/違反報告)
ミイナ - 言葉のセンスがものすごく私好みで、すごく面白かったです！これからも頑張って下さい！ (2018年9月1日 23時) (レス) id: 128b2b8258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霞草
| 作成日時：2018年8月26日 18時
