film 13 ページ13
．
「少々お待ちください」
そう言って厨房に消えた店員さん
私は古い時計を眺めて
その隣の大きい本棚の中の
古い本、新しい本、洋画、レコードを順に目で追った
先輩、こういうの好きだったのかな
日本の私立で1番頭が良いと言われる大学に進学したと聞いて
まぁ、そりゃそうだよな、と
どこかで納得して
きっと先輩のことだから
すんごい有名な企業に就職でもして
バリバリ働いてるもんだと思ってた。
そう、今日会った平野さんみたいに。
もう一度店内を見渡す
チラホラお客さんもいて
流れるBGMも落ち着くような雰囲気を醸し出している
でも
なんで先輩が？
自営業と言ったって飲食店だし
「安定しやんな」
と、言っていた先輩の顔を思い出す
手元のグラスに目を落とした時
「Aちゃん…？」
懐かしい
懐かしい声がした
トクン、と心臓が揺れて
高校生のあの時にあのほんの数瞬の中に引きずり込まれる気がして
恐る恐るその声のもとへ目線を向けた
白いシャツに黒いパンツとエプロン
腕まくりした袖から覗く血管の浮いた腕
その手首にはきらりと光るブレスレット
「先輩……」
久しぶりに見た先輩の顔は
何一つ変わっていなかった
しいていうなら、髪色が少し明るくなったこと
「久しぶり…やな」
なのにどこか違って見える
あぁ、そうだ
私を見る目が
「お久しぶりですね」
変わっていたんだ
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夜木(プロフ) - 今更この作品を知った者なのですが、中盤から終盤にかけての衝撃の展開に驚かされました。本当に表現が豊かで読んでいて楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！ (2019年2月27日 11時) (
レス) id: bbfe081cd6 (このIDを非表示/違反報告)
めろ(プロフ) - 素敵な作品でした！本当に霞草さんの物語好きです！ (2018年9月2日 19時) (レス) id: acc3eee29c (このIDを非表示/違反報告)
VV(プロフ) - すごく素敵な作品でした！また読みに来ます！ (2018年9月2日 15時) (レス) id: 3eb9f16513 (このIDを非表示/違反報告)
霞草(プロフ) - ミイナさん» 嬉しいコメント、本当にありがとうございます(；＿；)頑張れます！！ (2018年9月2日 11時) (レス) id: ce88fc3806 (このIDを非表示/違反報告)
ミイナ - 言葉のセンスがものすごく私好みで、すごく面白かったです！これからも頑張って下さい！ (2018年9月1日 23時) (レス) id: 128b2b8258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霞草
| 作成日時：2018年8月26日 18時
