その唇に花束を。

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一限が始まって、またもや15分ほど経った頃
廉くんであろう人の忍び足が近寄ってきて



「すまん、横座る」


片手でごめん、とやってみせ
またまた寝癖のついた丸メガネの廉くんがやってきた




「出席取るの最後だからって
遅刻ばっかだめじゃん、」

「えー、いいやん」

「いつか怒られても知らないよ」



ふてくされてる廉くんをよそに
私はノートに要点をまとめていく




「……なんか今日いつもとちゃう？」

「え？」



廉くんはそんな私をじーっと見て




「あ、髪がふわふわや」




そう言ってなぜか嬉しそうに笑った
目元にクシャッと線を入れる。それは髭みたいで


ペットは飼い主に似るって言うけど
あなたの場合、廉くんが猫ちゃんになってるよ。





「デートか？」



私の髪の先を 興味深そうにチリチリとつまんで
彼の左手は一切ノートをとる事に向かない




「デートじゃない」

「どうだか」

「違うってば」

「ムキになってる」

「なってない、」




廉くんは ケケケ、と笑って
丸メガネを外し ついにシャープペンを握った





「ノート見してな」



当たり前のように覗き込み
私の書き込んだものをまんまルーズリーフに写していく




「テスト知らないからね」

「そのときはAに教えてもらうし」

「私教えないよ？」

「またまたァ」





廉くんはお調子者だから
ほっておいてもよく喋る

だけど要領いいからか
先生には見つかったことがないみたい





「じゃーなー」




授業が終わるとそそくさと
仲の良い友達の元へ駆け寄っていく

昨日とは違う人
廉くんは 顔が広い。

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