その唇に花束を。

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昨日と同じ時間に起きて

背中の中ごろまで伸びた柔らかい髪を
波のように巻く。
ふわふわ、ふわふわ、バニラが揺れる。


ノースリーブのワンピース
立派な美しい赤に 少しだけ自信を貰う



外の気温は朝なのにもう30℃近く。
ふわふわの髪に 熱がこもる

足取りは軽く だけど少し緊張で重い




白のコンバースと骨ばった白いくるぶし
混み合う電車の中 今日は顔が下向いたまま、ぎゅうぎゅう詰めだ。



昨日と同じ時間 昨日と同じ場所
階段を少し急いで降りて
あの場所で待つ、スーツの彼



…あ、いた。




彼は時計と文字盤の下で
3番目に並んでいた。電車を待つ横顔。


少しずつ歩み寄り
人混みをすり抜けて

私より 少し高い肩を叩く
彼は少し驚き、振り向いた





「あ、」




そんな第一声を発し
彼は私の顔を見た





「どうも！昨日助けていただいた者です！」



案外上手く、話せるみたい。
浮つく胸も私の味方。




「また会えましたね」




とか言ってみるけど
待ってたんです。私、結構賢いんです。





「あー、そうだね。」




その男の人は少しぶっきらぼうで
なんだか冷たくて、
寂しいを通り越して申し訳なくなった


話しかけて欲しくなかったかも。


また会えたら、も
ただの社交辞令だったのかも。





「お礼を……、」





そう考えていたら
だんだんとなんにも言えなくなってきて

電車のアナウンスが耳に響いた。
その女の人の声を聞いて 彼は時計を見た


やだな
もう電車が来ちゃうんだ





「会えちゃったので、！！
お礼を…させてください………、」




勇気をふりしぼり
最後のひとことを言った

彼は時計から私に目を移した




「それ、綺麗だね」

「へっ、？？」

「赤いワンピース」





彼は柔らかい声で言った
嬉しくて嬉しくて、私は笑みが止まらない





「今日の午後7時頃
このホームで待ち合わせで。」





それだけ言って
ちょうど走ってきた電車に吸い込まれる





「はいっ！！」





お礼がなぜか、お誘いの形になっちゃってたけど
私がもしかするとご馳走するとかそんなことだろうな！
うん、お気に入りのお店とかがあるのかもしれないし

私も、お礼とは言っていたけど
どうしたらいいか分からなかったから

指定してくれた方がありがたいや。

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