その唇に花束を。

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「俺はもう、ダメだから。
ここで死ぬから、Aは逃げろ
知らんぷりして、逃げろ……っ」


ふるふると震える瞳に
今までの全てを重ねる


私を愛してくれたのは
あなたであることに間違いはない。





「優太さん。」






私は微笑んだ。


戸惑う優太さんの手を握り
私の首元へ移動させ


私は代わりに優太さんの首元を掴んだ




「“あなたが死ぬなら私も死ぬわ”」



優太さんの目が光った
綺麗な黒の瞳から 雫が一粒ながれおちる

私はぐっと、優太さんの首を握った



「優太さんも、はやく……っ」


私のもうひとつの手で
首元にある優太さんの手を掴み
強引に握らせる



ぐっと反抗する優太さんの手を押さえつけ
お互いの首を ぐっと、もう離れないように





「おい、いたぞ！！」





警官のそんな声が遠くで聞こえて
私は力をふりしぼり目を開けた。

涙が滲む私の前で
私の首を絞める、小刻みに痙攣した優太さんの姿






私たちはもう

ひとりぼっちなんかじゃない。






私達は分かり合えるはずなんてなかったのにね




最後まで

最後まで



愛おしく思える人は
一生に一度、あなただけでしょう





震える唇はどんどんと色をなくす

いつかきっと
その唇に花束を

添えられる日が来るのでしょう。







end

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