〇6 ページ29
．
8月の2週目に入って
ますます蝉の声は煩くなってきた日
バイト中に廉くんがやってきた
「おっす久しぶり」
ひょいと手を挙げて
彼はまた、少し洒落た格好をしている
「神宮寺さんならお休みだよ」
「ちゃうちゃう、今日はA」
「え、私？」
廉くんはこくんと頷いて
お店に入ってきた。
「ジンさんのライブ、今日の夜にあるねんけど
一緒に行かへん？」
チケットをひらひらとさせる
左手で揺れるそれは 前にもらったものと同じだった
「ていうか、断るとかなしやから。」
そう言って私の手にチケットを握らせる
同じの持ってるんだけどなぁ…
「行きたいと思ってたし、別にいいよ
シフト上がるのもう少しだから待っててくれる？」
「よっしゃ！！」
廉くんは大袈裟に喜んでみせて
じゃあこっちにおるわー、とコミック売り場へ行ってしまった
．
午後5時、シフトが終わり
すっかりコミックを一通り読み終えた廉くんに駆け寄る
私が来たことを確認して
読んでいた本を直した
「立ち読み良くないですねー」
「見過ごしお願いしますよぉ」
廉くんは手を合わせて 懇願してみせる
なんだか面白くって思わず吹き出し笑う。
「なんか久しぶりやわ、この感じも」
「そうだね、大学休みだと会わないもんね」
平野さんに挨拶してお店を出ると
少し空は曇っていた
「雨降りそー」
「廉くん傘もってる？」
「んーん、持っとらん」
手をひらひらと。
私もひらひらと。
「まぁ、ライブハウスは中やし大丈夫」
その言葉にうなずいて
廉くんについて歩いた。
「おぉー、人結構来てんな」
「神宮寺さんって人気者なんだね」
「おう、結構ここらでは有名やと思う
作詞作曲してんのもジンさんやし神やろ」
名前の通り？と笑ってくるから
そんなに面白くないよ、と言っておいた
午後6時、神宮寺さんのバンドのライブは始まった
初めて聴く、ライブハウスでの歌
「この曲、聞いたことある」
「えぇ？なんて？？」
「この曲！なんかしってる！！」
廉くんはあぁ、とパンフレットを開いた
「これやろ、これ」
名前を知って スッキリした気持ち
優太さんがよく歌ってる 鼻歌の歌
好きになってしまう神宮寺さんの声も歌も。
ぜんぶ優太さんの残り香のように
ぜんぶ優太さんのモノのように。
すっかりライブは盛り上がり
1時間半ほど歌い切った頃には
いつもの神宮寺さんとは思えないほど
ハツラツと、輝いていた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1195人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
霞草(プロフ) - ななかわさん» コメントありがとうございます。素敵な見解で、思わず返信を打ってしまいました…新しい作品もぜひ、読んで頂けたらと思います。 (2020年8月2日 14時) (
レス) id: cf24c8e438 (このIDを非表示/違反報告)
ななかわ(プロフ) - この夢主が、好きな人には盲目なのに、ただの同級生には相手にどう思われていようとドライなところとか、好きなんです(笑) こんな風に心から愛せる人に出会えるって、夢があるなぁと思いながら読み返してます。 (2020年6月13日 22時) (レス) id: fe68b6cd78 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃち(プロフ) - はじめまして。普段の岸くんのイメージと違いますが、とても魅力的な岸くんがみられて嬉しかったです。とてもキレイな物語ですね…岸くん主演で映画化してほしいです！ (2020年1月19日 22時) (レス) id: 90dd5545be (このIDを非表示/違反報告)
mzkswd(プロフ) - 霞草さん» ご返答ありがとうございます。そうなんですね！？今からめちゃくちゃ楽しみです！是非、廉主役でメンバー入り、お願い致します！！！！ (2019年11月9日 17時) (レス) id: b5bb64e790 (このIDを非表示/違反報告)
霞草(プロフ) - mzkswdさん» そうだったのですね…φ(．．)次に書くお話、そんなふうにしようと考えています。今しばらくお待ちを…○|￣|＿ (2019年10月31日 3時) (レス) id: 402b5f83f6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：霞草
| 作成日時：2019年3月24日 14時
