その唇に花束を。

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優太さんは私の存在を確かめるように
私の体の縁をなぞって形取るように
きつく つよく だけど優しく抱きしめた


軋むベッドは 沼のように深く
一度沈んだ身体はもう起こせない

足を引きずられ 伸ばした腕も遮られるように
私は 愛へと堕ちていった



「いいの？ほんとに」


確認するのは 多分 社交辞令
はじめてだから私はその言葉を素直に受け取った



「優しくしてください、」



私のその言葉には きちんと覚悟が滲んでいた
かすむ視界を優太さんに遮られ

私と優太さんはひとつになる



ベッドが軋むたび
ひどく痛む身体と

それに反して 高まる動機





「ごめんな、A…」

「また謝るっ…なんで？なんで謝るの？」

「ううん、ごめん」




優太さんはきつく
私のことを抱きしめる





もうなんとでもなれ、



そう思った頃には もう
なんとでもなっていた。

私はついに処女を卒業したのだ。






．






朝の光が指すころに
私の目は開いた


隣には 上裸の彼が
ゆらりゆらりと鼓動で揺れている





素直に好きだと感じて
優太さんの腕を軽くつねった

右、左、にひねって
二の腕の白く薄い肌をじっと見つめる



こんな所にあるほくろ
みんなはきっと知らないでしょう


二の腕のうらっかわ
ちょうど胴体に重なってしまう部分

2つ 離れて浮かぶ黒い点。



真ん中をつねって ゾウをつくったとき
優太さんは目を開けた




「なにしてんの……」




くすくすと笑う
彼は昨日とまったく違う人みたい




「ゾウさん」

「小学生かよ、
てかこんなとこにホクロあったんだ」

「知らなかったの？」

「うん。大発見だわ」




優太さんも知らない 優太さんのこと。
私がひとつ共有してあげたあなたの秘密




「優太さん、これからも家に来てもいい？」

「うん、いいよ」

「タメ口きいてもいい？」

「ん、もちろん」

「もっともっと一緒にいてもいい？」

「あたりまえでしょ、」



ははは、と
優太さんは朝から爽やかに笑ってみせる

その笑顔を好きになったのだ





「恋人になってもいい？」





優太さんはじっ、と
私の瞳を見て

また 優しく微笑んだ


「いいよ。」


その言葉を聞いて
私は 素晴らしく目覚めのいい朝を迎えた。

〇5→←．

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