恋とかホント、つまんないのに。【短】

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「んじゃおつかれ、
また来週同じ時間な。」




先生は黒いコートを羽織って
玄関から出ていった
その後ろ姿を見つめて
苦しくなる


受験生に、こんな恋なんて
酷でしかないよ、ほんと。




先生は、先生失格。




……ううん

私が受験生失格なのか。






静かになった部屋
先生の飲み終わったカフェオレのマグカップ

先生がくちづけた場所
この部屋に残るたった一つの証拠





キスはまだしちゃだめだ
こんなところで、ファーストキスは使ってはダメだ。





また来週、その言葉を胸に
問題集を開いた。

先生の赤ペンが残る
意外と不器用な字に思わず





「……………すきだよぉ…っ」






涙がひとつ 落ちる



本当は知っている
先生に彼女がいたことも
その彼女は2つ歳上なことも。


先生はちっとも優しくない
感情は分かりやすくないし、大人気もない




だけど

好きで 好きで 仕方なくって
何やっても勝てない この状況が
どんな勉強よりも苦しい



先生のおかげで頑張れたのに

先生と会えなくなると

一気に 体温は急降下








．







次の週、同じ時間
チャイムが鳴った

私はまだまだ 疼く胸を抱いて
階段を駆け下りる





「せんせっ」




バランスを崩し思わず 真っ黒のコートに飛び込んでしまう
とん、と受け止められる私の上半身





「……っ！ごめんなさいっ！！」





慌てて離れると 先生はわらった
初めて見たような
どこか哀しげな微笑みに

私は思わず息を呑んだ



ごくり、と喉仏が揺れると
先生は私をおしのけて玄関に入った





「気をつけろよ、ほんま」




そう言って
また私の事 軽々しく見下すの


でも、それでもやっぱり
先生だとなんでも嬉しくて
パタパタと後ろをついていく



これで最後




ちゃんと、分かってるよ。

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