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「そろそろ帰る」
私はそう言って
海人さんの目の前で立ち上がった
時計は8時をさしている
新しいスマホにお母さんからメッセージが届いた
「何してるの？早く帰ってきなさいよ」
分かってる、で済むような
メッセージを見てため息が出る
そんな私の様子を見て
海人さんはギターを置き立ち上がった
「送るよ」
初めて言われた言葉に
返事ができない。
「……ほんと？」
「うん。もう曲はできたから」
「え！じゃあ聞かせてよ！！」
海人さんは 俯いた
私は白いカーディガンを指先まで伸ばして包んだ
安心した。なぜか、とても。
「また今度ね」
その言葉に 私は黙る
これ以上を求めちゃいけないことは
私もちゃんとわかってる
だってもう高二だし。
ワンルームを出て
曇る空の下、2人で歩いた
階段は2人だと余計に軋んで
いま地震が来たら
たぶん私たち 一緒にいられる
だけどそんなこと、望んじゃいけなくて
私たちの足は止まることなく進む
古い駅、ICカードをかざす私と
そのままポッケに手を突っ込んでホームへ入る海人さん
「A」
「はい？」
ちょうど電車がきたのに
海人さんは何も言ってくれなくて
「海人さん、電車行っちゃいます…」
私がそう言うと
海人さんは私の右手を掴んだ
「元気でね」
その言葉にぜんぶがつまっていた
海人さんはなぜか泣きそうで
私までなぜか泣きそうになって
「なんでですか、また会えますよ
どこに行っても私、会いに行きますよ、っ」
海人さんは首を振って
私の手を離し 電車の中へと
私を押した。ぎゅっと押し込んでしまった
タイミング良く電車のドアは閉まる
私の他に2人しか乗らない
ワンルームよりずっと寂しい車両
海人さんはそのまま駅を出て
ふたりで来た道を戻っていく
いままでありがとう
そう言えなかった私はまだまだ子どもで
言わせてくれなかった海人さんもまだまだ子どもだ。
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霞草(プロフ) - aimiさん» コメント頂けて嬉しいです。久しぶりになにか執筆したいなぁと思ってます！ (2021年10月10日 1時) (
レス) id: cf24c8e438 (このIDを非表示/違反報告)
aimi(プロフ) - あと、燃える心に駆け抜けろの続編が読みたいです。よろしくお願いいたします (2021年10月6日 20時) (レス) id: 7523aceb2d (このIDを非表示/違反報告)
aimi(プロフ) - 私、こういう感じの作品初めて見ました‼️また、書いていただけると嬉しいです‼️ (2021年10月6日 20時) (レス) @page37 id: 7523aceb2d (このIDを非表示/違反報告)
すばりてちゃん - あぁ、やっぱり作者様が紡ぐお話はエモすぎる、と心より思います。いつか私も、作者様のように人を動かせるような言葉を紡げたらと憧れました。陰ながら応援しております。 (2019年12月25日 12時) (レス) id: 9aa5aa9bdc (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 岸くんのストーリー好きです。続編で長編とかも書いてもらいたいです。また、廉くんのストーリーも、番外編でも良いので、ハッピーエンドになるようなお話が読んでみたいです。よろしくお願いします。 (2019年3月24日 7時) (レス) id: 5ca5d758c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霞草
| 作成日時：2019年3月19日 0時
