77 無くせないもの（あなたside） ページ37
土曜日
いつも通り四方家に向かう
数日前、松本さんと再会してから、自分自身になんとも言えない感覚が残っていた
彼に対していった言葉に何一つ嘘はない
それでも…
考えながら歩いていたら目的の場所についていた
合鍵のカードキーでドアを開ける
優「あ。お姉ちゃんお帰りー！」
開けたと同時に飛びついてきた優梨愛を抱きしめる
あ「ただいま、優梨ちゃん、元気だった？」
うん！
と元気よく答えてくれる妹は初めて会ったときのまま懐いてくれている
優梨愛に連れられリビングに行くと、皆がそろっていて昼食が始まるところだった
梨「あ、Aおかえりなさい、疲れたでしょう？」
あ「ただいま、お母さん、お父さん」
鷹「あぁ、お帰り」
3年の間に、私は鷹弥さんと梨乃さんをそう呼ぶようになっていた
そして私のことも呼び捨てで呼んでくれている
それを二人が強く望んでくれたから
隆「姉さん、どうぞ座って」
私の席を当然のように引いてくれる隆斗
将来家業であるホテル経営を引き継ぐという覚悟がすでにできているみたい
あ「どうもありがとう」
お礼を言うと温かな微笑みをくれる
裕「お姉ちゃん、飲み物麦茶でいい？」
裕都は驚くほど気が回る
この家族が私を受け入れてくれたことはとても嬉しいしありがたい
それでも…
,
もし、私が和と会って、和解できてしまったら…
この家にはいられなくなるんじゃないか、とも思ってしまう
ーー私が助けたいのも、守りたいのも和だけですーー
嘘ではない
でも
無くし難いものが一つ、増えている
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作者名：にのもと | 作成日時：2021年9月13日 1時
