3 8 拍 目 ページ3
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「Aちゃんは……もうちょっと自分の気持ち大事にした方がいいよ」
目尻を下げて笑う真菰は、どうしてもいつも通りの真菰に見えなかった。
窓から差し込む夕日に照らされた彼女は、いつもの様な幼い可愛さではなく、美しさと儚さを放っていた。……触れたら、溶けて消えてしまいそうな、そんな。
「真菰ちゃん……に、A?」
高い声に振り返ると、カナヲがどこかオロオロした様子で立っていた。
真菰はふっと微笑むと、「……頑張ってね」と囁いてすっと私の横を通り過ぎた。
……って、どっかいかないでよ!!ちょっと真菰、逃げないで!?
あとで真菰に問い詰めてやるんだから……と思いつつ、「何でもないよ」とカナヲに向かって微笑んだ。いや、本人に言えるわけないじゃないか。
……今、カナヲと何食わぬ顔で仲良くできない自分が、すごく嫌だ。
カナヲはそんな私を見て、なぜかまつげを伏せて……顔をあげた。
「……私にも、教えてほしいの。何でもないわけないでしょ?Aのこと、全部知りたいの。ダメ……?」
「……っ、カナヲには関係ないことなの!!」
「天文科学館に一緒に行くだけなんだからっ」
カナヲの焦ったような、恥ずかしがるような声がふいに聞こえた。
それを聞いたら思わず……怒鳴って、しまって。
……え、私怒鳴っちゃった……?わからない。頭が真っ白で……。
カナヲはビクッと体を揺らして、怯えたように1歩後ずさった。
……失敗した。カナヲの過去を知っていながら、怒鳴るなんて……。
しかし、カナヲは小さく息を吐くと、また決意したように顔を上げた。
「関係なくてもっ、その……聞きたいの。昔、私たち隠し事なんてなかったでしょ?隠し事なんてしないって約束したでしょ?覚えてない……?」
そんな約束したっけ。無一郎もカナヲも、本当によく覚えている。
……私が忘れっぽいだけなのかもしれないけれど。
年月が経てば、人は嫌でも変わっていく。
人間との関係性だって変わる。好きな人間が、ある日嫌いになることもあるだろう。
約束だって、守れない日がいつか来る。
昔は「私たち親友!双子みたいに仲が良いの!」って言っていても、大人になったから必ず”価値観の違い”が見えてくる。
それで仲良くできる人もいるだろう。
……私には、きっとできない。
「……じゃあ聞くけど、カナヲは私に隠し事してない?」
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ゆうなつ - これからも頑張って! (2021年12月21日 21時) (レス) @page13 id: 17277d702c (このIDを非表示/違反報告)
奏@炭治郎大好き - お知らせ見ました!ゆっくり更新するんですね!無理せず頑張ってくださいね!この作品と作者様が大好きです!頑張ってくださいね!私、落ち込んでいたときにこの作品みつけて、とても励まされました!今度は、私が作品様を励ませるような人になれるよう頑張ります! (2021年9月3日 18時) (レス) id: 605309b64c (このIDを非表示/違反報告)
楪日織(プロフ) - 奏@炭治郎大好きさん» 優しいです〜思わず涙出ました笑 作者の事情ですみません。でも、待ってくれている方がいて嬉しいです……できるだけ更新するように努力しますね。ありがとうございます!! (2021年8月24日 22時) (レス) id: fd467e3021 (このIDを非表示/違反報告)
楪日織(プロフ) - 炭治郎好き。さん» ありがとうございます〜!!謙虚せずに受け取りますね(おい) 炭治郎好き。さんも文章力すごいですよ、毎回毎回話の発想が凄い……!! (2021年8月24日 22時) (レス) id: fd467e3021 (このIDを非表示/違反報告)
奏@炭治郎大好き - 全然大丈夫です!むしろ充分に休んでください!私はこの作品大好きですし、作者さんも大好きなので全然大丈夫です!ゆっくり休んでください!もし戻ってくるのであれば応援します!ゆっくり休んでくださいね!(^ω^) (2021年8月24日 16時) (レス) id: 605309b64c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:楪日織 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kasumi88/
作成日時:2021年7月22日 20時