心 拍 数 #2

３ ６ 拍 目 ページ1

・




「はーい。真菰ちゃんは着付け終わりね。次、カナヲおいでー」




ゆったりとした可憐な声と共に、真菰がひょこっとドアから姿を覗かせる。
隣の部屋でシャーベットとソーダをごちそうになっていた私たち――私、カナヲ、アオイちゃん、禰豆子ちゃん――は目を輝かせた。




「真菰っ！さすが私の真菰ッッ！！似合ってるよ浴衣！！」


「ふふ、ありがとう。でも私はAちゃんのモノじゃないからね？」




キメツ夏祭りが開催される昼下がり。
私たちは胡蝶家にお邪魔させていただいていた。
目的はカナエ先生としのぶ先輩に、着付けをしてもらうため。浴衣もついでに貸してもらうことになった。

真菰は濃いピンクに桜色の花模様の浴衣。
帯は紺色。
真菰にピッタリの、ふわふわとした雰囲気で、どこか幼さを感じる。


……――どこかで見たことあるような、そんな気がするした。




「……じゃあ私、行ってくる」




名前を呼ばれたカナヲは、少し頬を緩めながら隣の部屋に向かう。
浴衣を着るなんて、カナヲもきっとひさしぶりなんだろう。
……それに、今日は炭治郎がいるから。きっと……。




「カナヲ先輩の浴衣姿、絶対可愛いと思うので楽しみにしていますね！」


「禰豆子ちゃんもアオイも可愛いよ」


「なっ、私は可愛くないですよ！！」




禰豆子ちゃんは、撫子色に麻の葉文様の浴衣。
帯は市松模様。
ピンクでまとめているから、とんでもない可愛さを放っている。……善逸が気絶するかも。

アオイちゃんは、水色に睡蓮の花が描かれた浴衣。
帯は群青色。
爽やかでみずみずしい、とても夏らしい浴衣だと思う。





「カナヲ先輩の浴衣って、何になるんでしょう？」


「さあ……。ピンク系が似合うと思いますけどね」


「んー。カナヲちゃんなら、桃色とか似合うんじゃないかな」


「ぶっちゃけ、カナヲは何でも可愛いと思うけどね」






――数十分後、真菰の予想は大当たりだった。
カナヲはドアをほんのちょびっとだけ開けて、頬を桃色に染めてゆっくりと開けた。

桃色の浴衣に、桃の花が描かれている。
帯は白色。
可愛さだけじゃなくて、可憐でどこか儚さすら感じさせる……そんな。




正直に言ってもいいかな。
どうしようもなく、苦しくなった。




・

３ ７ 拍 目→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す