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柚音にとって何を言っているのかはさっぱり分からない。
だけれども、自分が恨んでいる存在だということは会ってすぐわかった。
――――ずっと、嗚呼、そうか。
「君たちのおかげで――――沢山の人と関われたんだ、本当に。尊敬する方と関わることができた、新しい友達ができた、素晴らしい話を感情移入して読めた。泣けて、笑えて――――挙げだすとキリがない。とにかく、世界に色がついた。新しい色が」
本当に意味が分からない。
こいつの頭は大丈夫か、と何も知らなければ思うだろう。
しかし柚音は、ただ黙ってその話を聞いていた。
「変哲で、普通で、何の代わり映えもない世界に――――間違っている、って何度も思っていた。でも変わったんだ、本当に」
そう言うと、柘榴は言葉を探すかのように目をつぶった。
「うまく言えないけれど、とにかく君たちを通して、世界に色がついた。どこか空っぽで虚しい自分が、消えた――否、詰まったんだ。君たちのおかげで」
「この出逢いが“運命”かどうかなんて、私にはわからない。それでも、幸せだったことに変わりはないから。…………ありがとう」
「……うん」
柚音ははっきりと頷いた。
心にあった黒い靄は、消えかけていた。
「もちろん、これで終わらせるわけないんだけど、さ」
「そう言うと思ったよ」
「どうせなら、最後くらいお望み通りにしようか?」
「……ううん。いいよ。運命は自分で選び取るものだから。刹那で選び取る最中、自分の未来を創っていく。未来は自分。他人に与えられるものではないの」
「わたし他人なんだ。ショックー」
「ウソ泣き野郎が――――!!」
――――貴女が嫌いだ。
でも、大嫌いではなくなった。
「もう時間だよ。私も、
気づけば、柘榴の体は霞がかっていた。
少し遠くから「柚音どこー?」という声も。
「――――次の子“も”幸せにしてあげてね」
「……嗚呼、もちろん」
「「またね」」
貴女が嫌いなはずなのに。
同じ様に笑い返したはずなのに。
貴女――――――否、
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「……次こそ、笑顔でまた逢えますように」
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また、がこの人にはないことは分かっている。
それでも、気づけば「また」と言っていた。
ただ静かに、桜の花が散っていた。
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朱音 - コレは涙ナシには読めません!!ホント作者さんは神です。 (1月4日 18時) (レス) @page47 id: f38b69f778 (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - お疲れ様です。 マジで泣ける。だいたい夢小説ってご都合の良いもの多いけど、この小説は神。無一郎&夢主来世で幸せになってるのうれしすぎ、、!文才ありすぎでしょうらやましい 長文失礼しました これからも頑張ってください! (2023年3月21日 11時) (レス) @page47 id: 1934e7457c (このIDを非表示/違反報告)
楪日織(プロフ) - Chiffonさん» あわわ、ありがとうございます〜!!なんかめちゃくちゃ嬉しいこと言われて、テンションがおかしくなった作者です() 今世で亡くなることは初めから決まっていたので、そこはサラサラと書けましたね。徹夜で最後まで読んでいただきありがとうございました〜!! (2021年10月10日 21時) (レス) @page47 id: fd467e3021 (このIDを非表示/違反報告)
Chiffon - あの…徹夜で読んだ中学生です…。作者様に一言。泣きました…。今世で亡くなっても来世でまた再開するところとか…。あとですね、文才がですね…。ください← ………すみません。深夜テンションなので意味不明ですね。とりあえず…素敵な作品をありがとうございます (2021年10月8日 4時) (レス) @page47 id: 030621147b (このIDを非表示/違反報告)
楪日織(プロフ) - 無有さん» コメントありがとうございます〜!!スランプ気味ではありますが、次の作品も頑張りますね。 (2021年10月7日 17時) (レス) id: fd467e3021 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:楪日織 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kasumi88/
作成日時:2021年5月9日 14時