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可愛い:5 ページ5

『ん、じゃあ家ここだから』

ありがとね、と松野くんに伝えると「いえ!また明日、学校で!」と元気よく手をブンブンと振ってくれた。

『うん、また明日!』

私はそう言って、未だに手を振りながらだんだん遠くなっていく松野くんに向けて手を振った。

『…可愛いって言われちゃった』

私が可愛いのは私が1番知っている。だって、可愛くないと友達なんて出来ないし、なんてったってつまらない。

私は小学校を卒業したと同時にこっちに引っ越して来た。中学校に入学するまでの春休みで、流行りの雑誌を今まで少しずつコツコツと貯めたお金でひたすら買い漁った。

自分に何色のリップが似合うか沢山試した。新しい制服のスカートの丈も、髪の長さも、ヘアアレンジの仕方も。何が1番似合うか母に沢山相談した。母はそんな私を見てから毎日嬉しそうで、笑顔が増えた気がした。

全ては「可愛い」と言われるため。

全てはもう二度と、嫌われないため。

だから私は毎朝、鏡に映る自分を見ては『今日も可愛い』と言葉をかけるんだ。

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作者名:イカスミチャン | 作成日時:2021年6月27日 0時

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