七年半前・五年半前 ページ3
*
それから半年経った頃、悪鬼Aのヒーロー名、イーモーションをメディアや噂でよく聞くようになった。あいつは個性が個性だけに戦闘向きじゃない。が、それなりの武術は仕込んである。
本家では尋問だ。悪鬼の個性“感食”は人の様々な感情・欲をたべる個性だ。黙秘を貫く者がいるならば、そいつの『黙秘欲』をたべる。すると犯罪者はポロリといままで黙っていたことを話してしまう。つまるところ、言葉勝負であいつの右に出るやつはいないのだ。
悪鬼はそんな風に尋問を中心に活躍してきた。大変ですけど、楽しい仕事ですよと悪鬼が答えたインタビュー記事に載っていたのを覚えている。
フったとはいえ大事な生徒だった子だ、なるべく活躍は目を通すようにしていた。
悪鬼が有名になってから二年は経った頃だろうか……。突然悪鬼が雄英を訪れた。
「今日、久しぶりに休みが取れたんです」
そういう悪鬼の顔は以前よりもやつれていて体つきは細くなっていた。そんなに疲れているのならば自宅休養をしっかりしろと言ったのだが「相澤先生に会いに来たのに……」とふてくされていて、しかたなくその日は残業をなくし、喫茶店で茶を取ることにした。
「最近どうだ」
そう問いかければ「まずまずです」と笑う悪鬼。
「まずまずならそんなやつれた顔するか？」
「……へへ、バレちゃいましたか。最近とても忙しくて。相澤先生に会えなくなると思うと心が苦しくて」
「……まだ、俺のことを、」
「そーですよ、悪かったですかー」
ぷくーと昔のようにむくれた顔をする悪鬼に懐かしさがこみ上げてきた。昔は……こいつが学生時代は適当にあしらっていただけでちゃんと話を聞いてあげたことはなかったなと思い返す。
「……やつれた顔の原因はそれだけじゃないだろう。俺も教師だ、話くらいは聞いてやる」
そういうと「ありがとうございます。珍しいこともあるんですね」と目を瞬かせる悪鬼。一言余計だ、とチョップを脳天に食らわせればすみませんと舌を出す。
「実は最近、個性の副作用が出始めてて。今までそんなことなかったからどうしたらいいかなぁって悩んでまして」
「副作用？ 具体的には」
「たべた感情・欲が自分の中に溢れ出ちゃうんです。まだ押さえられるほどなので大丈夫なのですが……いつか、自我を失っちゃうんじゃないかって不安で不安で」
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レイ - 最後の話で心臓がチクってなったので凄い話だと思いました！ (2022年10月30日 1時) (
レス) @page8 id: 7d0fba99d3 (このIDを非表示/違反報告)
くるいばな(プロフ) - エイブルさん» まずは数多ある作品の中から当作品を選んで頂き、ありがとうございます。当作品の人の闇を感じていただけたようで光栄です。 (2020年1月29日 15時) (レス) id: 7f443d252d (このIDを非表示/違反報告)
エイブル(プロフ) - 恐い……心臓鷲掴みにされたかと思いました(色んな意味で)…深夜に読んだ私はバカだった…… (2020年1月27日 3時) (レス) id: ec6de62270 (このIDを非表示/違反報告)
くるいばな(プロフ) - ちひろさん» まずは数多ある作品の中から当作品を選んで頂き、ありがとうございます。過去に書いた作品が今も読まれていることを知り、とても嬉しいです。 当作品は人の闇を描いたもので、夢主さんの心の奥底に住み着いている恐ろしい『獣』を感じて頂けたようで何よりです。 (2020年1月26日 16時) (レス) id: 7f443d252d (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ - 夜中に読んだ私がアホでしたゾッとしました！！ (2020年1月22日 23時) (レス) id: 5c3739082a (このIDを非表示/違反報告)
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